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「ローズガーデンのローズ様と考えるのが妥当でしょうけど、療養中という話は聞かないわね。」
クレアも首を傾げる。
国に金の採掘について報告もなく流通させていることが既に問題だ。それに関わる人たちも同様に。
「何故マンドレイクは金をそのまま所有するのではなく売り捌きたいのだろうか。」
オリバー様も不思議そうにみんなへ問いかける。
「さぁ?何か事業で多額の支払いが迫っているとか?」
「金についての証拠を少しでも残したくないとか?」
「それなら買ったものだと言えば良いじゃない?」
様々な意見が出る中で、ずっと考え込まれていたマリー様が口を開いた。
「私の知る限りでは…『療養している有力者』だけの情報なら5人把握しています。『ローズ様』が偽名である可能性もありますし、流通関係で療養中の方はその内の2人。お一人はカレンデュラ領の商家の当主ブルーベル・ペリウィンクル様。女性です。貴金属類の取り扱いもされています。お2人目は、ローズガーデン領の商家ルナリア・ローズランド様。こちらも貴金属類の取り扱いもされています。女性です。『ローズ様』というお名前ならルナリア様が最も可能性が高いと思いますが、ルナリア様の病状は貧血が進行しているためあまり動くことができないと伺っています。対し、ブルーベル様は謎の病で高熱が続いていると。症状からするとブルーベル様の可能性が高いです。」
マリー様は誰よりも情報が入る。だからこそここにご同席頂いたのだが。子どもたちをどうするかについても良いアドバイスを頂けるからというのもある。
「そうね。ローズ様というのは偽名で、ブルーベル様が当該の取引先なのでしょうね。最近ペリウィンクル商会の羽振りが良いとかそういったお話しはありましたか?」
クレアがマリー様へ尋ねる。
「そうですね、最近は質の良いアクセサリーに定評があるようです。もしマンドレイク商会から不正に入手した物であるとすると、金は市場に流すだけでなく、加工してから流している可能性がありますね。ただ、ブルーベル様のお人柄は清廉潔白で公正な方であると評判です。そんな不正に手を貸すとも…。」
何か訳ありなようだ。
「ブルーベル様が療養中であることは周知の事実であるなら、誰かが代わりに当主の代理を務めているのでしょう?それは誰が?その方についての情報はありますか?」
クレアも不正は他の誰かが行なっていると踏んでいるようだ。
「はい、当主の実妹のアナベル様が取り仕切っていらっしゃるそうです。アナベル様は商業の才覚は無いようで、ご自身が良いと思うものを作り、販売しているようです。商品の質は良いものの売れ行きはあまり…という事ですが、金の横流しで利益を得ていたのなら納得ですね。」
ハルバードも疑問があるようで、皆へ質問する。
「ブルーベル様とやらが病気になっちまう前から金の取引をしてたんかね?それともアナベル様とやらに変わってから?ブルーベル様の目の黒いうちは金の不正取引なんて許さねぇだろ?アナベル様としては自分のやりやすいようになってるのに、何でブルーベル様の病気を治そうとしてんだ?ブルーベル様が自分でそんな依頼をできる状況じゃねぇんだろうし、マンドレイクに依頼するならアナベル様がやってんだろ?」




