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「僕はタンポポ。どこにでも根を張って、花を咲かせるよ。そして、どこにでも、遠くでも種を届けられるんだ〜!」
『種を撒く』とか『飛んでいける』ではなく、『種を届ける』。
ダンの表現に、ゴールドガーデンで生きていく決意と信念を感じた。
ダンはダンなりに、新しい人生について考えていたのだろうな。
まだ子どもなのに。本当にしっかりと生きられる子だ。
「楽しみね。ダンはどんな大人になりたい?」
うーんと唸りながら考える。
「やっぱりね、僕はハルバードのおじちゃんみたいになりたいの。戦うのは僕は弱虫だから無理だけど、優しくて、強くって、みんなを守れる人。そういう心の人になりたいな!」
ダンの言葉を聞いて、ハルバードは嬉しそうにニヤついた。
そこは嬉し泣きで泣くのを堪えるとかして欲しいけど。
ハルバードらしい。
「ダンならなれるぞ。ただな、自分を甘やかすなよ。自分を大切にはしろ。絶対に大切にしろ。でもな、自分を甘やかすな。そしたらダンのなりたい大人になれるぞ。」
ダンはハルバードの言葉に目を輝かせて嬉しそうにしている。
「うん!まだよくわからないことだらけだけど、エレナお姉ちゃんにたくさん教えてもらうね!」
そんな私たちの様子を、ハオマとアシャも微笑みながら見ていた。
「アシャ、お勉強も途中だったのにこんな風に連れ出してごめんなさいね。ゴールドガーデンにも優秀な調香師はいるから、そこで学べるように領主様へも掛け合うからね!」
アシャへも話しを振る。
アシャだってまだ子どもで、これからたくさん色んな経験をして大人になるのだから。
やりたいことをやれる環境を作らねば。
「むしろありがとう。マンドレイクさんは良い人だったけど、最近はなんだかおかしかったんだ。兄さんが不幸にならなくて良かった。だからエレナには感謝しかないよ。昔も今もね。」
追手がいないことを確認し、エルム村に入ると、ハルバードが慣れた様子で馬小屋から馬を一頭連れてきた。
「ハルバード、勝手に連れ出して大丈夫?」
恐るおそる聞いてみたが、ハルバードは笑う。
「大丈夫だ。ここの馬はほぼ俺のだからな。馬は連続で仕事があるときは休ませるのに変えなきゃなんねぇ。だから足の速いヤツをその時の仕事に応じて連れてくんだ。馬の面倒は村で見てくれてっからな。俺が馬を連れてくときは、柵に紐を結んどくんだ。だから紐が結んであれば『またハルバードが連れてったな』としか思わねぇんだよ。」
しかも結び方はハルバードの独特の結び方だから、余所者はマネできないらしい。
馬がすぐに用意できて良かった。
三頭に分かれて乗馬し、ゴールドガーデンへ向けて出発した。
シャムロックからの追手は居ないようだ。




