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朝が来た。
睡眠時間は割と短かったであろうが、とてもよく眠れた。
何時からならハオマとアシャは起きているのだろう?
夜に時間を約束しておけばよかった。
一人でまた悶々としていると、トイレに行くついでにハオマの部屋の前を『通り過ぎて』戻ってくることにした。
中の気配が無ければ寝ているだろうし、起きていればノックしてみよう。
早朝から男性の部屋をたずねるだなんて、淑女としてあるまじきことだろうが、今日の貴重な時間を逃せば次にいつ会えるのかわからないのだから。
目当てのハオマの部屋だが、結論から言うと起きているようだ。
話し声が聞こえる。
マンドレイク様の声が主に聞こえている。
「…そう言わずに!今までもよくやってくれていたではないか!なぜダメなんだ?」
「僕は………今までは本当にお…のつもりで………。これからはあなたへのお……はこれまでどお……つもりですが、それ以外は……します。」
「なぜだ?さてはあの娘が何か吹き込んだのか?お前をたぶらかして!許せん!」
「な⁈!彼女は関係ない!これは以前から思っていたことです!切り出すタイミングを図っていただけです。」
ハオマもヒートアップして声を荒らげている。
「いや、そんなはずはない。このタイミングでこんなことを言い出すなんてあの小娘が何かお前に言ったのだろう!」
「ですから!!僕は直接僕の作る薬を求めてこられた方へ直接ご状態などを確認してからでないと薬を作ることは難しいと申し上げているのです!あなたから又聞きでわかる範囲で作れる薬は大したものは作れないのです!マンドレイクさんの言う薬はかなり強い薬です!そんなものホイホイと作るわけにはいきません。だから今後はマンドレイクさんを挟まずに、私が直接お客様とやり取りをしたいんです。」
「そんな必要はない!今までは私が言えばその通りに作っていただろう!それなのに今日に限ってそう言うのは、お前があの小娘に騙されているに違いない。目を覚ませ!あんな女すぐ追い出してやるからな!」
何となく話しが見えてきたが、ハオマに薬を作らせようとマンドレイク様が来たのだろう。
そして、かなりの劇薬をご所望な方からの依頼なのだろう。
薬には作用と副作用があるというのは、少しでも学があれば誰でも知っていることだろう。
ハオマが直接やり取りをすると言っているのに拒否するのは、薬代だけではなくかなり上乗せした額でやりとりしている可能性が高い。
今まで従順に?調剤していたハオマが、このタイミングで断ってきたことに、そのケースだから断っているのではなく、私が昨夜ハオマにマンドレイク様にとって不利益な何か余計なことを言ったのだと思っているのではないか。
それでマンドレイク様は激昂しているのだろう。




