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再度小声で確認する。
「ハオマ、あなた達は本当にこのままここに留まって生活を続けることを望んでいるの?もしもあなたが望むなら、王都でも、ゴールドガーデンでも生活できるように手伝うことはできるわ。ただ、あなたがこのままここで暮らすという選択をするのなら私はそれを反対したりはしないわ。ハオマの人生の計画はどうなっているの?」
ハオマはしばらく考え込むと、私の手を握った。
「ありがとうエレナ。僕は確かにマンドレイクさんに恩義があるからこそ、役立つならば恩返しをしていきたい。アシャもまだ勉強中だ。中途半端なままここから去るのはアシャにとっても良くないと思う。せっかく道を見つけたのだから、その道を狭めるようなことはしたくないんだ。ただ、そんなことを言っているといつまでもここから出られないだろうとは思っているんだ。それは今までのことを振り返ると間違い無いだろう。僕に利用価値があるうちは手放さないかもしれない。でも今度はアシャにも価値を見出したら。それこそここに留まらなければならないだろうね。どこかのタイミングでここを出るという区切りを付ける必要があるのは確かだ。エレナのおかげで気持ちが固まったよ。」
大きく深呼吸をすると、決意を口にした。
「僕たちはここを出るよ。でも今じゃ無い。これから行商で出かけた際に準備を進めていく。まずは住む場所を探して、それから出ていく段取りだ。アシャの学びの場も失わないように、調香師がいる所の近くで探して、なおかつ、アシャの奉公を引き受けてくれるかも確認して。全部同時進行で転居を進めるよ。まだどの地方で暮らすかも決めてないからね。これからアシャとも相談して決めていくよ。」
しっかりと具体的に考えていることに安心した。
マンドレイク様に流されて、このままずっとここにいることになるのでは無いかと危惧していたから。
そのうちにハオマとアシャはマンドレイク様に利用されて使い捨てられてしまうのでは無いかと思う。
ハオマは恩を盾にされれば嫌と言えないだろう。
それでマンドレイク様の金儲けの仕事ばかりになれば、ハオマのやりたい仕事をしていけなくなる。
ハオマがどんなことをしたいのか、目標などはわからないけど、少なくともハオマのやりたいことをやりたいように出来たら良いなと思っている。
もちろんアシャも。
「私にできることがあればいつでも言って。手紙をよこしてくれればすぐに対応するわ。私はゴールドガーデンの城に居るから。何ならゴールドガーデンに来てくれたら嬉しいんだけどね。これからハーブ園を作るのよ。是非アドバイスして欲しいわ。ハーブ園で栽培したものは加工していく予定なの。染料にしたり、香料にしたりね。だからハオマもアシャも活躍できる環境ではあるのよ。」
そう言うとハオマの握る手は一層強くなった。
「ありがとう。アシャとも良く相談して、手紙を送るよ。どこに行くことになるかはまだわからないけどね。ゴールドガーデンは比較的薬草の栽培にも向いているからね。ハーブ園頑張ってくれよ。僕たちが手伝えるか、それともたまに見せてもらって口だけ出すかわからないけど、エレナの作るハーブ園は楽しみだよ。」




