201
2人とも良い出会いがあったようで本当に良かった。
「2人は今幸せ?」
核心を問う。
2人が幸せならばこのまま今の生活を続けていくだろう。
そうでないならば、私にできることは何かないだろうか。
幸せであって欲しいが、また頻繁に会えるようにもなりたい。
私のわがまま。
アシャは微笑みながら頷いた。
「父さんたちが亡くなってからは、これから2人でどうなることかと不安でしかたがなかったんだ。それが有難いことにこんな高待遇で生活させてもらえてる。他人と言わざるを得ない大人の庇護に頼っているからこそ、いつまでも甘えられないこともわかってる。兄さんも仕事が軌道に乗って、僕もやりたいことを見つけた。昔では考えられなかったけど、勉強までさせてもらってる。これ以上望むことはないと思う。あとは僕が生きる力を身につければ、兄弟2人でここを出てどこかで家を持とうと話しているんだ。だから僕たちの今は幸せだよ。」
きちんと2人で話し合い、人生設計しているようだ。
私が心配することは何もないようで安心した。
「アシャはまだ10歳くらいなのにしっかりして。お勉強頑張ってるからかしらね。夢を持てて素敵よ。絶対に叶えてね。」
「ありがとう。僕は自分にできることを全力でやるよ。勉強もなんでもそう。与えられたチャンスは与えられた時に掴んでいくんだ。いつまでもチャンスが目の前に無いことも、僕にはまだなんの力も無いことも、よくわかってるからね。与えてもらったことに感謝して、それを最大限に活かせるように努力する。エレナにもらったチャンスも、今に活きてると思うんだ。エレナがあの時助けてくれなかったら。きっと僕たちはもっと早く父さんたちとお別れしてただろうし、もしかすると僕たちも…ね。マンドレイクさんに出会うまでの道は、エレナのおかげで通ってこられたのかもしれない。これからの道はマンドレイクさんのおかげで通れる道が何本も見つかった。自分の力で道を選んで進めるように、今は勉強を頑張るんだ。ところでエレナは今どうしてるの?」
幼い子どものように思ってしまう年齢だが、中身は随分と大人だ。
私のことも恨んではないようで、逆に感謝されてしまうとは。
なんだかよくわからない気持ちになってきた。
目頭が熱いが、考えるフリをして天井を仰ぎ、大きく息を吐く。
そして今度は私のその後を話す。
ハオマたちと突然の別れを迎え無気力になっていたが、ハオマに教わった薬草の知識を活かしてハーブティーのお茶会を開いたりして毎日を惰性的に過ごしていたこと。
父から王城へ行儀見習いとして奉公に出されたこと。
そこで親友となるクレアとの出会いがあったこと。
クレアと共にゴールドガーデンへ移り、侍女として働きながらゴールドガーデンにハーブ園を作るためにクレアと段取りをしていること。




