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一通り私の中での質疑を終え、良い面・改善が必要な面などを確認出来たため、あとは会議の進め方などを理解できればというところだ。
「トラバース殿、お忙しい中ご対応くださりありがとうございます。今後ゴールドガーデンの議会の参考とさせていただきます。」
「いえ、お役に立てたのなら光栄です。また何かございましたら議会終了後にお声掛けくださいませ。それでは私は一旦失礼致します。」
トラバース殿は議会の準備へ戻られた。
会議が始まる前にメモを整理しておこう。
じきに始まるのか議席が埋まってきた。
先程トラバース殿が資料を特別に用意してくださった。
本日の議題は3つ。
①ゴールドガーデンの領主ディアス家への爵位授与(国王発案の議題。議会で採択後に閣議へ上申していく予定)
②本年の税率
③野盗対策
と書いてある。
いきなり閣議で決まるのでなく、議会で他の貴族の意見を確認してからとなるのか。
なぜ王都の議会で爵位についての検討をするのか疑問ではあったが、確かに他の貴族との兼ね合いもかなり大切な分大臣クラス以外の貴族の意見も集約できる王都議会は丁度良い場なのだろう。
議会開催の合図の鐘が鳴る。
「これより、王都議会の会議を始める。本日の議題は資料の通りだ。まず、先日国王陛下より発案された、ゴールドガーデンのディアス家への爵位を下賜されるという件についてだ。それ自体は決定事項だが、どの位を与えるのが適当であるか王都議会の意見を確認したいとのことだ。戦前のディアス家は伯爵家であった。現当主のクレア・ディアス殿は政治経験が無いが、ゴールドガーデンの発展のため改革を行い、成果を出しつつある。これならば元の爵位を与えても何ら問題がないのでは無いかというのが陛下のご意見である。あるいは功績としては侯爵位でも、と陛下はおっしゃっている。しかし、やはり当主が弱冠15歳で政治も経済も未経験でその教育も受けていないことが不安要素であり、今後もこの発展を安定させることができるのかどうか。それを踏まえて意見を募ろう。」
シーンと静かな議会内では、資料をめくる音しか聞こえない。
皆貴族とはいえ、爵位を持たぬ者もいる。
それを私のような若輩者が爵位を与えられるのは正直気に入らないだろう。
「議長、私から良いでしょうか。」
1人の男性が沈黙を破り挙手する。
「ではダンテ子爵。意見を。」
「失礼致します。国でも広大な土地を持つゴールドガーデンは昔から領内でも土の性質が異なり、安定的な収入を得ることは難しかった。そんな中で根本的に農作に不向きな土地は工業として発展させていく。これは大変理にかなっており、国中でも採用して国レベルで発展させたいと思うほどの優れた政策です。また、税収も無理に納めるのではなく、地方の収益によって税率を変え、不作により貧しい土地からはひとまず納税を免除するなど、領民の生活に寄り添った領地経営をされています。現在のディアス殿を取り巻く要人たちは父君の代の者たちであると聞き及んでおります。取り巻きの力でこれらが行われているのならば、おそらく父君の代から政策は行われているはずです。クレア殿の代になって初めて行われたことを考えると、クレア殿の発案で政策を施行しているのでしょう。専門的な知識や経験が不足していたとしても、政策の方針は大変秀逸です。知識や経験は周囲で補えるでしょう。この先もゴールドガーデンの発展は安定するものと考えます。従って、伯爵位でも侯爵位でも適正と言えるのでは無いでしょうか。以上です。」
ダンテ子爵という方は私の施策を私の力だと認めてくださっているのだ。
この方とは今後協力関係が作れそうだ。
こういう発言の内容から、敵意や好意を感じ取って協力者となり得る人物をチェックするのも今回の議会の見学において重要な事項なのだ。
経験の浅い私は、とにかく他の貴族の支持を得たい。
コネクション作りは必要不可欠なのだ。




