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静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
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得意げにそう言うと、宿の人に裁縫道具を借りて繕い始めた。

子どもにしては案外上手い。


「ダン、どこで習ったの?とっても上手ね。」


手を休めることなく、ダンは楽しそうに答える。


「あのね、針と糸を買わなきゃいけない時にお店の人に教えてもらったんだよ。それからは教えてもらったのをぼくがもっとこうしたらキレイになるかなって考えてやってみるの。そしたらどんどん上手になったの。父さんもよく服が破れてたから直してたんだ。でも1度も褒めてくれなかったんだ。多分気付いてもいないかもね。」


教えたことの飲み込みも早ければ、更に応用までできると言うのか。

ダンは天才だ!

なんて親バカ?な思考になった。


「糸だけなのにまつって、更に編んでる?みたいにしてるのね。」


「うん。糸で布を繋ぐだけだとゆらゆらするから、間を布みたいに糸を通すと、見た目も布みたいになって穴が開いてたのもわかんなくなるんだ!布はね、要らないものを解いて見たことがあるの。布って糸をたくさん使って作ってるんだよ〜。この直し方はね、ぼくが考えたの!ふふん」


ご機嫌なえくぼを浮かべながら、手はしっかり動かしている。

表現がかわいい。

親バカってこんな感じなのねって痛いほどわかったわ。


そう言えばアシャもこんな感じだったな。

今はどんな子になったかしら。

おそらく10歳くらいになってるはず。

調香師になりたいなんて夢を持って奉公までして偉いわよね。


「ダン、すげぇな!お前その道のプロになれるぞ!ガキんちょがこれだけ上手くできりゃお店になったら新品みたいなのができるな!」


ハルバードもダンを褒めると、ダンが赤くなった。

…なぜ?


「ダン?どうかした?」


そう言うと縫い物の手を止め、私に向かって照れながら答えた。


「あのね、ぼくハルバードおじさんみたいに強くなりたいの。さっき助けてもらってとってもカッコ良かったから。ぼくもエレナお姉ちゃんとか、誰かを守れる人になりたいなって。だからハルバードおじさんに褒められて嬉しいの。」


私の心臓は撃ち抜かれた。

ハルバードも同様に。

これはこの3人で1番強いのはダンではなかろうか。


「坊主、俺の思う強えやつってのはな、優しい奴なんだよ。時々優しさを履き違える奴が居るんだがな、本当に優しい奴ってのは誰に対しても優しいし、心にしっかり芯の通った奴だ。自分の正義を持っていて、曲げないが、それでいて相手の意見も聞いて受け入れる度量を持つ奴だ。優しい奴は強い。優しいからこそ、人を守る力を持ってんだ。守り方ってのもな、力で守るやり方もある。頭で守るやり方もある。色んなやり方があんだ。お前が誰かのために強くありたいなら、まず自分の信念をしっかり持つんだ。自分の損得じゃなくてな、互いに損も得もなく同じ高さで物事を見るんだ。お前にゃ難しかったな。」


じっとハルバードの言葉を受け止め、懸命に理解しようとしている。


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