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ダンはやはり二つ葉に詳しく、現在地から最短で検問所へ行くルートを案内してくれた。
お使いの帰り、急いでいたから家までの最短ルートを通るためにあの路地を使おうとして、酔っ払いに絡まれてしまったのだ。
ダンのお使いの品はちゃっかりとハルバードが貰ったようだ。
『これはおじちゃんにあげる!助けてくれたお礼だよ!ありがとう!』
そういってお酒を渡していて、ハルバードも有り難く頂戴していた。
門番も交代時間なのか早く帰りたいようで、特に問題なく検問所も通過できた。
三つ葉はこれから夜と言うことで賑わいを見せていた。主に飲食店の。
ただ、やはり二つ葉よりも客層も良く、下品に馬鹿騒ぎする者は居ない。
良さそうな宿を探そうかとハルバードに相談しようとしたが、ハルバードが先手を打つ。
「主人殿、オススメの宿屋があるのだが。飯がうまいのだ!あとは風呂もあるぞ。ベッドは普通だが、まぁ飯がうまいからな!」
よほど美味しい食事を出してくれるのだろう。
ハルバードが安心できる宿屋を知っているならむしろ有難いことだ。
二つ返事でそこに決めた。
町のほぼ真ん中にある宿屋で、こぎれいな外観だし、ご飯が美味しいとなれば言うことがない。
しかもお風呂もあるなんて最高ではないか!
風呂なしの宿屋が主流なので、これは有難い。
「ハルバード、ダンの服を新調しようと思うの。背が伸びたのか、つんつるてんでしょ?せめて背丈にあった動きやすい服と靴を揃えたいわ。」
するとハルバードも乗り気でそれならと萬屋に案内してくれた。
「ここは品揃えも良いし、値段の割に質も良いんだ。俺も良く世話になってるんだぜ。って言ってもここに来る用があるときだけだけどな。」
確かに物は良さそうだが、割安だ。
「ダン、気に入った服を選びなさい。洗い替えも必要だし、上下5着選びなさい。あとは靴ね。靴は1足で良いわね。値段よりも、試着してみて動きやすいものを選びなさいね。」
私の言葉に素直に頷き、あれこれと見ては試着して吟味していた。
…やっぱりかわいい。
ある意味誘拐じみたことをしてしまった。
クレアに彼をどういう立場として生活してもらうか相談しよう。
きっとクレアとも気が合うだろう。
私の弟になってもらうとしたら、父と養子縁組が必要だし、そうするとまだ子どもということで王都で父と暮さねばならない。
引き取った手前、ゴールドガーデンで一緒にいたい。
ダンが自分の人生をどう選択していけるか。
大人として、せめてより多くの選択肢を用意できるように私も努力しよう。
彼が働ける歳になるまでは、庇護下に置いて成長を見守りたい。
これが母性的なものなのだろうか?
ただの同情というわけではない。




