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「ハルバード、私もうこんなやりとり飽きたわ。こんな小芝居うんざりよ。さっきから普通に立ってるし、何なら『折れた足に』体重をかけて立ったりしてたもの。コイツらめんどくさいわ。」
ハルバードへ出動命令をする。
ハルバードは獲物を小男の足元に突き刺す。
「うわっ!?危ねぇだろ!」
と言いながら両足で跳んで避けたのだ。
「折れているのでは、無いのですか?」
ハルバードが凄む。
殺気にまみれて気絶しそうな2人を見ながら、更に追い討ちをかけるべく問いかける。
「あらもう治ったのね?良かったじゃない。明日からも働けるわね!」
笑顔でそう言うと、男たちは愛想笑いで引きつった顔で応える。
「あ、なんかただの打ち身?かも…?折れてなさそう…かな〜。心配かけてすまねぇな!じゃ、これで!」
大男も気まずそうな怯えたような態度だ。
「あ、明日が腫れてるから折れてるかと思ったけどよ、よく考えたらあいつデブだから肉だな!ハハハ…なんて…?じゃあそう言うことで!」
そう言って2人とも逃げて行った。
「ハルバード、こんな時悪役って『覚えてろよ!』って捨て台詞を吐くものじゃないの?」
思わずそう言うと、ハルバードはため息をついた。
「小物感が凄えからな。最早セリフは要らないってことじゃねえか?とにかく、しょうもねぇゴロツキだな…」
確かに一つ葉の危険性はもっと高いと考えていただけに、かなり拍子抜けしたのは事実だ。
この程度ならちょろいが、帰りは『お土産』を狙って襲撃を受ける可能性が高い。
四つ葉で仕入れたものなどを商人などから奪うと言う話しも耳にする。
したがって、まさに『行きは良い良い帰りは怖い』だ。
結局ハルバードが居なければあんなゴロツキでも追い払えなかっただろう。
馬を引きながら検問所へ向かう。
またしても通行手形の偽造疑惑があり、足止めを食らう。
今はもう昼もとっくに過ぎたおそらく2時ごろだろう。
このペースだと四つ葉までたどり着くのに夜か、下手すると明日になるかもしれない。
クレアの侍女長であると伝えても、中々信じてもらえない。
「なぜ信じてもらえないのですか?クレア様に使いを頼まれたのです。ローズガーデンのシャムロック四つ葉にしか売っていないという、クローバーストーンの首飾りをと頼まれたのです。高価な品であるがゆえに、侍女長である私にこの任をおまかせになられたのです。」
クローバーストーンとは、ローズガーデンでのみ産出される鉱石で、その加工はシャムロック地区でしか行なっていない。
この地区が高い壁に囲まれているのも、その加工技術を秘伝とし、他所へ情報が漏れないようにするためだ。
黄緑色の透き通った宝石で、石の真ん中にハートのような影が映るようにカットされている。
さながら四つ葉のクローバーのような形に加工して、アクセサリーとしての人気を博している。
私がいくら必死に訴えても、やはり信じてはくれない。
まぁ半分嘘なのである意味門番たちは良い勘をしている。




