表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
182/398

182


一つ葉を越えればあとはそれほどの危険はないだろう。まぁ帰りはまた危険だが。


少しずつ検問所へ近づいていく。


私の右側に馬が居るが、その陰から突然人が現れて大きな声で叫びだした。


「痛ぇ!馬に踏まれた!!こりゃあ折れたんじゃねえか?痛ぇよ〜。どうしてくれんだよ?!」


年は40くらいだろうか。中肉中背だが背丈が私ほどの小さめな中年男性だ。

私の馬に足を踏まれと言う。

更に陰からもう1人現れ、まくしたてて来た。


「おめぇ小さいからなぁ。見えなかったんじゃねぇか?ウシシシ。足が折れたって?どれ、見せてみろ。」


筋骨隆々の180センチはあろう30代ほどの男性が加わる。


「ありゃこりゃあ折れてんな。これじゃあ明日からの仕事もできやしねぇな。どうすんだ?困ったぞ〜」


2人はニヤニヤしている。

イチャモンをつけて金をせびろうと言うのか。

面倒なことになった。

ここは事を荒立てずにいくらか渡すか?

いや、そうすると帰りにまたカモにされて更にせびられるに違いない。


「私の馬が大変申し訳ない事を致しました。よろしければお手当てをさせていただきたいのですが、御御足を拝見できますか?」


下手に出て様子を見てみる。

大男が急いで包帯を巻き始めた。

…用意の良い事で。


「手当ては俺がするから大丈夫だ。ただなぁ、コイツ明日からの仕事ができねえとよ、家族に飯を食わせてやれねぇんだよな。コイツガキが7人もいてよ。かかあも病気で金がかかるし、困ったなぁ。」


大男が良い人のようなことをわざとらしくのたまう。


「痛ぇよ〜!どうしたら良いんだよ〜!?明日から暮らしていけねぇよ!俺たちゃお終いだ。死ぬしかねぇ。」


小男も人生詰んだという顔で私をみる。


「申し訳ございませんでした。ただ、もし骨が折れているのであれば、包帯だけでなくきちんと副え木を致しましょう?骨がズレてしまうと治りも悪くなりますし。包帯を外しますね。」


私が足を見てみようと近づくと、大男が遮る。


「まずは応急処置だからこれで大丈夫だ。俺の手当てが悪いってのかい?イチャモンつけてくれるのか?」


私を小娘だからと凄んできはじめた。

金を出せと言わないのは、こちらから言わせようとしているのだろう。


「わかりました。治療費をお支払い致しましょう。」


私がそう言うと2人とも顔を合わせてニヤリと笑う。


「ただし、私も人様にお怪我を負わせたという事実をきちんと受け止め、反省したいのです。あなたの足の状態を見た上で、適切な治療費と慰謝料と、当面のご家族を含めた生活費を支払う必要があるでしょう。お怪我に見合った金額をお支払い致しますので、お怪我のご状態を確認させてくださいませ。」


男たちの顔が一瞬固まり、愛想笑いを始める。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ