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「みんな元気だよ!あんたのお父さんにもよく世話んなって、いまだに取引させてもらってるよ。あんたんとこは正当に品の価値を評価してくれるから安心だよ。ところで1人でこんなとこまで来てどうしたんだい?」
ニーナさんはガハハと笑いそうなくらいの気風の良さでそう言う。
「実はね、隣のシャムロックまで行きたいんだけど、四つ葉までだから1人じゃ不安で。護衛にハルバードを雇いたいのだけど今居るのかしら?」
馬を繋いでハルバードの家の方に向かって歩きながらそう言うと、ニーナさんは大笑いしはじめた。
「あんなとこまで何しにいくんだい?そりゃあ護衛も付けないと危なっかしいわ。ハルバードなら今裏の竹林で竹を切ってんじゃないかね?行ってみな!」
「ありがとう!行ってくるね!」
村の裏側に竹林がある。村より広いかもしれない。
竹細工もこの村では行なっているため、材料の竹を採っているようだ。
ハルバードは傭兵として雇われているときはそれで賃金を得ているが、依頼のない時には竹細工を作りそれを売ることで収入を得ている。
「ハルバード?居る?」
竹林は広い。
入口でそう叫び、ハルバードの居るところを確認する。
特に返事がないため、中へ進む。
しばらく竹林の景観を楽しみながら耳を澄ませていると、竹を切る音が聞こえて来た。
「ハルバード?居るの?」
大きな声で呼ぶと、音が止んだ。
「誰だ?こっちに居るぞ〜。握り飯でも持って来たのか?」
懐かしいハルバードの声がする。
「エレナよ。久しぶりね。ごめんなさい、おにぎりは持って来てないのよ。」
ようやくハルバードの姿が見えた。
作業用の服を着て、相変わらずの髪と髭。
目つきも鋭いが、実は優しい。
元々親父ギャグ好きなのはあるだろうが、おそらく私が怯えないように気を遣ってくれているからこそのあのキャラクターなのだろう。
「お〜エレナ。久しぶりだな。何年か見ないうちに大きくなったなぁ!おいちゃんは嬉しいぞ。」
相変わらずのひょうきんな態度に安心する。
「最後に会ったのは2年前ね。私、2年前から背も体型も変わってないのよね。ハルバードこそ変わらないわね。」
私の言葉にハルバードがガハハと豪快に笑う。
「そうかそうか。適当に言ってみただけだ。で、なんか用か?2年ぶりに俺に会いたくて遊びに来たんか?」
そしてまたガハハと笑う。
「違うわよ。仕事の依頼に来たの。シャムロックの四つ葉までね。往復の護衛をお願いしたいの。受けてくれる?」
そう言うとハルバードは真顔になって頷いてくれた。
「そうかい。エレナの頼みだもんな!断れねぇよ。そのかわり報酬は弾んでくれよ?」




