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静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
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これから危ない地区へ向かうことを考えて、身なりは町娘という風にあまり目立たない装いにし、アクセサリー類も付けていない。

もっとも、馬を乗り回す町娘はそうそういないのである意味目立つ存在にはなるだろう。


ハルバードを雇って、シャムロックを突っ切る。


そんな行き当たりばったりでうまくハルバードを雇えるかも、問題なくシャムロック地区を通過できるかもわからない状況なのに、なぜかそれがうまくいく気がしている。


『何とかなるさ。』


父がよく口にしていた。

お人好しである父だが、不思議と騙されることもなく、楽天家でふわふわしていたが、人を見る目が備わっているのだ。

そして、何の根拠もなく勘で『何とかなるさ〜』と笑っては事業を成功させていた。


ハルバードもそんな父の信頼のある傭兵であるから安心だ。

もしハルバードが不在でダメでも、なぜだか何とかなる気がしてならない。


父とは違って、私のは完全に勘なのだが。


クレアと話して覚悟ができたからか、気持ちが晴れ晴れとしている。

馬で駆けるこの風切る感じが、爽快感を一段と引き立てる。

このまま世界の果てまででも一息に駆けて行けそうだ。


途中、畑で育てられている作物をチェックしたり、その育ち具合を通りすがりに見ながら移動する。

ゴールドガーデンは国内でも農作物を栽培するのに適した地域だ。

土も良く、水にも恵まれている。

ゴールドガーデンにも農地に適さない土地ももちろんあるが、大部分は肥沃な土地だ。


畑の作物だけでなく、道端には色々な野の花が咲いている。


この土地があるからこそ、ゴールドガーデンは田舎であるのに栄えたのだ。

クレアのご先祖様も、農業を主産業として安定して食糧を確保でき、税収も安定していたため、国内の飢饉の際に他領への支援を行なったことで伯爵位を賜わったと聞いている。


領内をこうして見ていると、今後の発展を想像してワクワクする。


景観を楽しみながらあっという間にローズガーデンとの境の村へ着いた。

ハルバードの家は村のど真ん中だ。

この村はエルム村と言う。

名の通り楡の木がシンボルとして村を守るように囲んでいる。

この村は農地には適さず、木彫りの工芸品や彫刻という芸術を生業としている。

皆職人気質でやや気難しいが、情に厚い人々だ。


「あれ?エレナか?久しぶりじゃないか!」


赤髪の母ほどの年頃の女性に声をかけられる。


「あ、ニーナさん?!お久しぶりね!元気だった?」


ニーナさんは父ともよく取引をしている女性だ。

女傑と言えるほどの強気で、商人に引けを取らない頭の良いサバサバとした性格。

彼女の両親が商人に商品を安く買い叩かれていたことが悔しくてたまらないのだと言う。


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