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〜エレナside〜
クレアが私の背中を押してくれている。
いつもは私の方がお姉さんで、私がクレアにこうしたアドバイスをしているのに。
いつのまにかクレアがこんなことを私に諭すようになるなんて。
頼もしい友を持って幸せね。
「クレア、私行ってくるわ。馬を借りても良いかしら?3日間有意義に過ごすわ。」
決意を友に伝える。
もう迷わない。
ハオマに会って、お互いの近況を報告しあって、また友として会いたい。
以前は本当の意味での友とは言えなかったかも知れない。金銭面で少しは援助していたから、きっとハオマは負い目があったかもしれない。私は全く負担もなく、私の自由意志で勝手にやっていただけだが。
クレアに馬を借りる約束をすると、それからはすぐに身支度を始めた。
「エレナ、庭は私も庭師もいるから安心して。私は身の回りのことだって1人でやれるし、他にもメイドはいるから。でも完璧な侍女兼執事兼親友はあなたしか居ないから、休暇が終わったら戻ってきてね。」
クレアはそう言って私を送り出してくれた。
「クレア、ありがとう。行ってくるわ!」
そう言ってローズガーデンへ向けて駆け出した。
シャムロック地区は四つ葉のクローバーの形の地区で、それぞれ一つ葉、二つ葉、三つ葉、四つ葉と分かれている。一つ葉町はいわゆる貧民街で治安が悪い。二つ葉町は労働者の町。三つ葉町は平民の町、四つ葉町は商業の町だ。
それぞれの町はハートを象った塀に囲まれ、門がある。特に一つ葉と四つ葉の間は厳重だ。
出発の際にクレアから通行手形を貰えた。
領内だけでなく、ローズガーデンでも使える通行手形だ。
関所は問題なく通れるだろう。
あとは手形やお金を奪われないように自衛せねば。
シャムロック地区は一つ葉から順に通り抜けなければならないのだ。
こうなればシャムロックに行く前にローズガーデンとの境の村で護衛を雇うか。
あそこらへんは傭兵も多いからお金で雇える傭兵が何人か居るはずだ。
以前父からお使いでローズガーデンへ行く時に紹介された傭兵が居る。今誰かに雇われてなければ良いが。
名前は、ハルバードと言っていた。
おそらくは本名ではないはず。名前の通り武器はハルバードを使っていた。
最後に会ったのは2年ほど前だと記憶している。
見た目40代くらいの大男で、長髪を1つにまとめてひっつめており、長い顎髭、全身黒の戦闘服を纏い、第1印象は『怖い人』だった。
ところが、話してみると親父ギャグ好きな気の良いおじさんだった。
ずっと1人で話しているくらい賑やかしい人で、すっかり怖い人のイメージは崩れて楽しくお話しできた。




