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やや寝不足なのは否めないが、爽やかに朝を迎える。
早くエレナに会いたくてそわそわと落ち着かない。
執務室へ地図を取りに行き、自室へ戻る。
ほんの少しの違和感を感じたが、それが何かわからず気のせいかと思い直す。
自室で着替えたりして身支度を終えると、廊下に人の気配が多くなったのを感じる。
皆が仕事を始めたようだ。
そろそろエレナが来る。
「クレア様失礼致します。」
エレナが入室する。
「おはようエレナ。良い天気で気持ちの良い日ね。」
「おはようございます。朝のお茶をお持ち致しました。もうしばらくで朝食もご用意できます。どちらにお持ち致しましょうか?」
「ではここにお願いするわ。エレナ、朝食の時にお話ししたいことがあるのだけど良いかしら?」
おそらくエレナは出勤前に朝食を済ませているだろう。
素直に話しがあると伝えることにした。
「かしこまりました。それでは失礼致します。」
お茶を飲みながらエレナとの話をどう進めるか考える。
毎日ハーブティーは配合を変えているらしい。
今日のお茶は甘酸っぱくて何だか切ない気持ちになる。色もピンクで可愛らしい。
「クレア様、朝食をお持ち致しました。失礼致します。」
エレナが入って来ると、私はお茶の感想を伝える。
「エレナ、今日のお茶は何だか切ない気持ちになるわね。嫌な感じじゃなくて、何というか…胸がキュッとする感じ?何だか不思議な気持ち。」
私がそう言うと、エレナは微笑んで応える。
「はい、今日のお茶は『初恋』をイメージしてブレンドしました。甘酸っぱい味も、香りも、少しピンクの色も、初恋のもどかしさや切なさをイメージしています。」
「ブレンドティーって名前で売り出すよりもイメージで名前を付けるのは良いわね!作り手の想いがより伝わりやすくて。ご購入される方もお茶会や自分のお茶の時間を楽しむにもイメージや効果がはっきりしている方が選びやすいものね。」
色々なイメージやハーブの効果を商品名にして売り出す。素敵な戦略だ。
「ところでエレナ、話しがあるのだけど、ここからは一旦友だちとしてってことで仕事から離れて聞いてね。」
私がそう言うと、エレナは不思議そうに首を傾げて頷く。
「わかったわ。」
そして地図をエレナへ差し出す。
「ハオマとアシャが見つかったわ。隣のローズガーデン領のシャムロック地区に居るそうよ。今も薬師として行商で生業を立てているそうよ。アシャは調香師になるべく、通いの奉公に出ているらしいわ。ハオマは家を空けて遠方へ行くこともあるようだけど。」
そう伝えるとぎゅっと唇を噛み締めている。
「エレナはどうしたい?ハオマに会いに行く?3日のお休みを申しつけるわ。会いに行くも良し、ここでのんびり過ごすも良し。好きにして良いわ。あとね、この情報を調べてくれたのはマリー殿よ。もっと何か聞きたければマリー殿へ聞いてみると良いわ。」




