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マリー殿はしばらく考え込む。
「ではクレア様、私にハーブの美容ラインの企画をお任せ頂けませんか?全てでなくとも、一部で良いのです。私とても美容に関心がございまして、是非化粧品類の開発を共にさせていただきたいのです。」
驚きの申し出に戸惑う。
「でもマリー殿も今後議会議員としてのお仕事もございますし、ご負担が大きいのではございませんか?」
「私は管轄を人事局で立候補しております。それなりに忙しいとは思うのですが、何も全てをお任せ頂くのではなく、あくまでも企画としてご提案させていただきたいのです。私のように40近くなりますと色々とこうできたらと要望もございますの。でも流通しているものは私の要望に中々合わないものばかりなのです。たまにで良いので、私の意見を取り入れて頂けるととても嬉しく思います。」
なるほど。私はその辺は疎いためよくわからないが、実際に使う方々の意見が聞けるのは大変参考になる。
「わかりました。企画・サンプルの使用と感想をということでご協力頂きます。むしろこちらが助かります。よろしくお願いしますね。」
私がそう言うと、マリー殿は嬉しそうに破顔した。
「マリー殿、あなたのこの恩にきちんと報いるためにも、任命状を作りましょう。少しお待ちいただけますか?」
大急ぎで任命状を作成する。
『ゴールドガーデン領主クレア・ディアス伯爵より、マリー・ミラー殿をハーブの化粧品への加工企画・開発の相談役に任命する。尚、本人はこれにより化粧品開発の企画の提案、開発に際しサンプルのレビューを行い改善点の提案をできるものとする。』
「こんな感じでよろしいでしょうか?」
マリー殿へ確認し、良いとのことだったので日付を入れて署名・押印した。
「クレア様、わざわざこのように任命状まで!ありがとうございます。私がんばりますわ!」
目や背景に炎が見える錯覚を起こすほどの気合が入っている。
「こちらこそ、本当にありがとうございます。」
ご挨拶を済ませたのち、マリー殿はお帰りになられた。
明日エレナに会うのが楽しみだ。
何ならそのままお休みとして休暇を与えようかしら。
エレナは働きすぎだもの。ちょうど良いわ。
執務室の鍵のかかる引き出しへ地図をしまい、自室へ戻る。
明日のことを考えて顔がにやけて止まらない。
喜んでくれるかしら?
エレナが喜んでくれるならできることはやりたい。
何にせよ、明日だ。
子どものように興奮から眠れなくなる事象が発生したのは内緒だ。




