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やはりできるだけ製造ラインを整えることは必要だ。
職人探しに領内を行脚するか。
自分の目で見てスカウトしたい。
となると、やはり選挙が終わって私が手を出す仕事が減ってきてからになるか。
それまで何もしないわけにはいかない。
各職人のリストを作ってまとめておこう。
仕事に目処が立ったら訪問できるように相談もしておきたい。
それぞれ工房内に職人が何人くらいいるものだろうか?
引き抜いて工房が機能しなくなってはいけない。
万が一1人ならば逆にチャンスかもしれないが。
戸籍は整理したが、現状で何の仕事に従事しているかもある程度把握できると納税も管理しやすいのではないかとふと考えた。
村長に村人のリストを作成してもらおう。
今後転職も増えるだろう。
年に一度は更新するような管理を考えよう。
まずは領内の工房を調べるところから。
領内の工房で職人を引き抜かなかったら、国内でということで探すか。
そうなるとやはりコネクションをしっかり繋げていかねば。
そろそろ自室へ戻ろうかと思っていると、ドアがノックされる。
入室を許可すると、女性の声が聞こえた。
「失礼致します。」
入ってきたのはマリー殿だ。
マリー殿がいらっしゃるということは、例のあのことだろうか?
思わず心臓が強く脈打ち、拍動音が聞こえるくらいに緊張する。
「いかがなさいましたか?マリー殿。」
マリー殿は声を少し小さくすると、ドアの外を気にしていた。
「エレナ殿はお帰りに?」
やはり例の件で間違い無いだろう。
「ええ、エレナはもう上がりました。」
心臓が飛び出してくるのでは無いかと思うほどに緊張が高まる。
「例の…ハオマとアシャの居場所がわかりました。意外と近くにおりましたのよ。ローズガーデンに2人で暮らしています。ハオマは現在薬師として行商しています。アシャは調香師を目指して通いで奉公しているようです。地図に家の場所に印をつけてあります。シャムロックという地区の、四つ葉という町です。ハオマは行商ゆえに家を空けることも多いそうですが。ようやくご報告できるだけの情報が揃いました。遅くなり申し訳ございません。」
マリー殿が申し訳なさげにしているのがかえって申し訳ない。
「マリー殿、ありがとうございます。本業ではございませんのによくぞこれだけ詳細に情報を探って頂けましたね。本当にご苦労様でした。このまま足取りがつかめない可能性が高いと思っていたくらいです。よくぞと有り難く思っております。早速明日エレナに話してみますね。マリー殿、何かお礼がしたいのですが、何かご希望はございますか?」
本当に有難い。
素晴らしい情報網をお持ちでいらっしゃる。




