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エレナと時間を決め、それまでに仕事を整理していくことにした。
あっという間に約束の時間になり、軽装でエレナと庭へ出る。
驚くほど成長した3種類のハーブたちが生い茂っている。
パールミントは可愛らしい花や身をつけ、レモンビーンも身をつけている。
ゴールドローズも赤と青の花をつけ、ちらほらと実もつけている。
「よそで咲いている様子を見たことがないからよくわからないけど、どれもよく咲いているわね。実もつけているし。あとはどれも色が鮮やかね。育てやすいからこんなに育ちが良いの?エレナの研究の賜物かしら?」
美しく咲くそれらを見て嘆息する。
緑だけでも多くの色があり、それに混じって赤や青、白、黄色が互いに存在を引き立てている。
葉も、花も、実も、全てが美しい。
「元々育てやすくはあるわ。でも庭師さんたちもよく世話をしてくれているから、通常よりもうんと育ちが良いのよ。花は一般的なものより一回りくらい大きいのではないかしら?肥料も皆んなと相談して工夫しているからかしらね。もっと寄って香りも確かめて見て。」
畝まで2〜3mというところまで近づくと、ミントやレモン、ローズの香りがそれぞれから感じられる。
香りも鮮やかに、爽やかな香りを漂わせ、ここに居ることが至極の時であるとさえ感じる。
これがアロマテラピーというのだろうか。
香りが心地良い。
目を瞑っても、開けていても、何だか幸せな時間になる予感しか感じない。
「私ずっとここに居たいくらいよ。まさに楽園だわ。」
私が思わずそう呟くと、エレナは笑いながら同意する。
「そうなのよ。想像以上に大成功よ。加工用に栽培するのがメインだと思って居たけど、ハーブ園は見学スペースをしっかり確保しないとね。目で見て、香りを楽しんで、ハーブの生命力を感じて、この空間を堪能すべきよね。多くの人が訪れることになると思うわ。」
「そうね、通路と栽培スペースは検討が必要ね。通路を余計に確保する必要があれば、温室の広さもまた検討が必要かもしれないわね。エレナ、私これからは何も用がなくてもふらっと庭に出てくるかもしれないわ。幸せな気持ちになれるもの。」
「庭師さんもそんなことを言ってたわ。『ついここに足を運んでしまうから、理由づけのためにやたらと手入れをしてしまう』って。それで益々よく育つみたい。私も休みの日はふらっと来てここで何をするでもなく過ごすことがあるわ。」
みんなここに思い入れもあるし、だからこそ余計にこの居心地の良さが倍増しているのだろうと思う。
関係者でなくとも、きっと居心地の良さを感じるはずだ。
ハーブ園開園が待ち遠しい。




