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「私の父も私も、ゴールドガーデンの生まれです。お父上のアーノルド様からオズワルド様に代替わりした際に王都へ移り住んで参りました。いわば故郷の領主様を友達だなんて畏れ多いことでございます。」
拒否されたのか、あるいは本当に遠慮しているのか。
真意は不明だが、気持ちを伝えていこう。
「私のはじめての友達が、私の愛するゴールドガーデンの人であるならそれはまさに願ったり叶ったりです
。お願い出来ませんか?」
元々お転婆な性格というエレナは、いたずらっ子のようににこりと笑うと、了承してくれた。
「私のような平民でも良いのでしたらよろしくお願い致します。でも友達だなんて私に務まりますかしら?どうして良いのかわかりません。」
困り顔でエレナは答える。
私も悩みながら、どうしたものか思案する。
「エレナ、あなたにはお友達はいますか?その方々とどのように交流なさるのですか?そもそも私にはお友達がおりませんので、困ったことに友達とはどのようなものなのかよくわからないのです。」
エレナは笑顔になり、得意げに答える。
「多くはありませんが、友達はおります。お互いの自宅でお茶会を開いたり、お買い物へでかけたり、ただひたすらお話をしてみたり、お手紙を書いたり…そんな感じですわ。お話しというのも噂話に華を咲かせて、お互いの思い描く未来へ励まし合ったり、内容は様々です。」
お友達のことを思い出しながら話しているのだろう。目をキラキラさせるというのはこういうことなのだろうと言うほど、活きいきとした顔で答えた。
「本ではお友達という存在を知っているのですが、私の知識としては人生を輝かせることができ、無くてはならない大切な方のことを言うのかという認識です。しかし、関係性によっては逆に絶望へ誘う悪魔のようにもなり得るものだと理解しています。」
友達とは、について理解を深めて、エレナとお互いを高め合える存在になれたらと願う。
「クレア様、少々お考えが堅いと思いますよ。良いのです。楽しければ。お互いが同じ時間を楽しみ、共に色々なことを考え、感じ、笑顔でいられる。悲しいときは共に悲しみ、癒す。喜びも、悲しみも、怒りも、恋も。悩んだり、励まし合って、支え合える。それが友達だと思います。早い話が『同じ時間を共有できる・したいと思える存在』なのではないでしょうか?何かあったとき、『会いたいな』『話しをしたいな』と思える心が近い人かな、なんて思います。」
中々哲学的なことを議論している気がするが、難しく考えたり、友達のあるべき姿を追求する必要は無いのだろう。
エレナの話しは目から鱗だ。
『会いたいな』や『話しをしたいな』と思える人。
それがきっと、お互いを尊重しつつ、足りない部分をカバーしたり高め合える結果に繋がるのか。
お互いをわかりあえる…そんな友人がこれから何人もできるのだろうか?




