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〜クレアside〜
会議が始まった。
重大な報告事項としてテッドから例の件を報告してもらうように話しを振る。
優しいテッドのことだ。
私が悪く取られないように言うのだろう。
自分のことよりも、相手を気遣い、思いやる人だから。
こんなにも私を大切にしてくれる人を、私はなぜ愛せなかったのだろう。
いや、厳密には愛していないわけではない。
家族愛とか、仲間への愛というか、情というか。
テッドのことは間違いなく好ましく思っているのだ。
ただ、特別にテッドにだけ抱く感情ではないのだ。
同じように大切に思う人たちは多くいるが、分類は同じなのだ。
テッドの話を皆とともに聞く。
やはりテッドは私を悪く言わない。
私のせいで大怪我負ったのに。
私がいるからここを離れることにしたのに。
そして、まるでお互い結婚への意思がないかのようにも語っているため、誰も反論のしようもないようだ。
ここに居ても、私の顔を見るのも辛いと。
これでは誰も引き止められない。
誰もここに残って共に生きることを提案できない。
提案したとて、彼の意思は固いのだから、覆ることは無いだろう。
特に皆からの意見や質問、反対もなくテッドの報告は終わった。
「皆様、私たちのことで皆様を振り回してしまうことを申し訳なく思います。エドワード殿の今後については議論を重ねた結果なのですが、私が至らぬばかりに皆様の納得できる結論にすることができず申し訳ございませんでした。エドワード殿にとって最善の選択であると信じて、今後の成功を祈りましょう。」
複雑そうな表情ではあるが、皆様も反対しづらい雰囲気である。
不服そうではあるが、ご理解頂けたようだ。
今はまだ思考が追いつかないようなところがあるかもしれない。
後から反対派などが現れる可能性もある。
「エドワード殿が去り、私が領主としてここに残ることにもし不服があるならおっしゃってくださいね。私はいつでもオリバー殿へこの地位を引き継ぐ覚悟はあります。その時は私は隠居してのんびりと過ごしますから。」
それ以降、皆おし黙る。
私かテッドか。どちらかは身を引くということが伝わり、不服気な態度から一変、困惑した様子に感じる。
これ以上の意見などもなかったため、通常の会議に議題を戻していく。
「もう1つ。婚約解消を国王陛下へご報告致しましたことはお伝えいたしましたが、それに付随し私へ縁談が来ております。正式にお受けするかどうかはじっくりと検討いたしますが、私個人の意思ではなく、ゴールドガーデンのために最善となるよう結論を出したいと思います。」
これについても更にざわついた。
「クレア様、そのご縁談のお相手とはどなたなのでしょうか?」
質問があったが、どこまで答えるか悩ましい。
「正式に縁談の申し込みということでの書面はなく、現段階では口頭でのご縁談のお申込みという段階です。正式なものとして公表するべきでは無いと判断いたしますので、今はお相手についての回答は控えます。今後の進展次第で早めにご報告いたします。」




