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馬車は順調に進んでいく。
クエンティンとも穏やかに世間話をし、明日からの議会選挙に出馬すること、立候補に際して担当局長を務める局を財務局か流通管理局とするかで悩んでいることを相談された。
クエンティンの家は商家で、その次男だ。
昔から金銭の出納管理や、商売についてを叩き込まれている。
だから財政管理や流通ということで希望しているのだ。
選挙の方針として、立候補の際には局長となる担当局も提示するのだ。
議会構成は局編成に伴い多少変更したようだ。
議長1名、副議長1名、書記2名、広報3名。
それに各局長1名ずつ
財政局、農林水産振興局、厚生労働局、土木建設推進局、安全管理局、流通管理局、法務局、工業推進局、
生活相談所、人事局。
ただ、農林水産局と土木建設推進局、安全管理局は副長も配置する。
広報はそれぞれの事業についての領内外への広報活動や、議会の決定の通知、各局間の連絡係を兼ねるそうだ。
私が療養に入ってからのことは大まかにしか知らなかったが、クエンティンからそのように詳しく話を聞いた。
どの局に候補するか、あるいは議長などに立候補するか、それぞれが決める。
もし候補のいない席があれば、落選の候補者で得票数の高いものが繰り上げで当選として当てていくが、あまりにも能力に合わない場合は議長と領主の判断と、その結果で議会の承認が得られた場合のみ配置転換可能となる。
色々なパターンを検討して、対応について議論を重ねたそうだ。
話を戻すと、そんなわけでクエンティンはどの局を選ぶか次第で対立候補が居て落選した場合は希望しない局に配置される可能性があるため、慎重に選択したいようだ。
「クエンティンは相手の気持ちや行動をよく見て考えて対応できるし、人相手に交渉していくことに向いていると思う。財政管理ももちろん適格だろうが、流通に関して新たな道を開いたり、輸出入などの交渉をしたりと、人相手にやり取りをした方が良いのではないと思うのだが。口数は少ないし、上手いお世辞なども言わないお前だが、相手の心を読みながら交渉していく能力というのはそうそう持っている者はいないぞ。私は流通管理局が適当だと思う。」
私がそう言うと、クエンティンもほっとしたように笑った。
「相談してみて良かった。私もそう思ってはいたのだ。それに財政局だと対立候補が出そうだからな。ただどの部署もそうだが、手探りで物事を進めねばならない分、確実にきっちりやれる仕事は財務局かということも考えていてな。新規事業ばかりだが何事も挑戦だな。」
何となくの印象だが、言うほど悩んではいなさそうだ。
多分私に明日からのことを教えてくれようとしたのだろう。
いつでも私が復帰できるように。
私はゴールドガーデンを出ていくのだが、それは戻ってから皆に周知していく。
クレア様が悪く言われぬように。
あくまでも私のわがままで婚約を解消し、出ていくのだと。




