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「実は、パーティーでマーティン王太子殿下から求婚されました。」
叙爵式前の国王陛下との謁見で、テッドとの婚約解消をご報告した際に求婚されたこと。
パーティーで3曲も踊り、それから公然で求婚されたこと。
パーティー後も私の泊まる客間を訪ねてこられたこと。
テッドの時のように、結論は1年でも2年でも待つと言われたこと。
私との縁談が叶わねば生涯独身でいると告げられたこと。
王弟殿下であるセドリック・スペンサー公からもアドバイスを受けたこと。
それらを報告した。
しばらくオリバー殿は考え込まれた。
「そうですね、この件はゴールドガーデンのことなどは置いておいて、クレア様の気持ち次第で良いと思います。セドリック公からも養女とするなどの方針を打診頂いておりますので、お受けすることには問題ございません。お断りされるされるときもこのまま今のようにということで問題ございません。元々クーデターを起こし、オズワルドを失脚させたら我々で領内を自治政府的な形でまとめていく予定でした。それに、あなたが領内の仕組みを再編してくださるおかげで、上に誰が立とうと動くのです。クーデターの時、あなた様を見つけられたからこそ、あなたを領主として担ぎ上げてしまいましたが、それが重荷となるのは我々も本意ではない。あなたが殿下との未来を歩みたいとおっしゃるのなら、そうすべきです。我々とゴールドガーデンで過ごすことを望まれるのなら、我々も今後もクレア様の下で粉骨砕身、お支えいたします。あなたは今まで失うものが大きすぎた。今後はあなた自身の幸せを考えるべきです。もちろん、王家に嫁ぐことはその後の人生の苦労は絶えないでしょう。しかし、殿下と共に在ることを望まれるならば、それがあなたの幸せなのです。」
そう言って、私の好きにして良いという結論をくださった。
「オリバー殿、私は恋愛がなんたるか、全くわかりません。色々と考えるとお断りしたいところなのですが、殿下のお気持ちを尊重し、期限を設けて結論を出していくのが殿下にとっても良いのではないかと思うのです。それまでは今までのように、交流を持ちながら互いのことを知っていくことで、私が誰と生きていきたいのか、どう生きたいのかを考えたいのです。」
「良いと思います。いつかはクレア様は誰かと縁談があるでしょう。その時も必ずしも相手と心が通じ合えるとは限らない。よく知らない相手が、結婚すると人が変わったように冷たいなどということもよくあります。それならば、殿下のようにある程度交流もありお人柄がおおよそわかっているお相手との縁談というのは、私としては歓迎です。期限は1年後の叙爵式の日ということで一旦お返事されてはいかがでしょう。」
オリバー殿も私の背中を押してくれる。
ゴールドガーデンの今後など、基本的には『私が居なくとも何とかなる仕組み』を目指しているけれど、それがこういう時に役に立つとは。




