148
「ウィステリアが流行れば良いわね。藤棚は是非作りましょうよ。エレナのハーブ園のすぐ近くで。藤のポプリとか素敵よね。あの香りは癒されるもの。」
「そうね、宝石加工の工房が近くにあれば、是非藤のアクセサリーも置きたいわね。」
色々な今後の展望をさらに深め、楽しい時間を過ごした。
帰ったら、テッドとの婚約解消を公表するのと、議会選挙の立候補者の公募をしなければ。
そして、オリバー殿と殿下との縁談の相談と。
ハーブ園の移転も進めなければいけない。
やることがたくさんだ。
でも、1つひとつやっていくしかない。
私が全て1人でするわけではないのだ。
任せられるところは任せて、協力してそれぞれを進めていくのだ。
独りじゃない。
私が全てを背負わなくて良い。
まだまだ甘える範囲は模索中だが、以前よりは人に任せる範囲が増えた。
決して信頼してないのではなく、お任せすることに申し訳なく思っているからこそだった。
皆のキャパをある程度わかっている今は、任せて良いものか、私がやるべきなのかある程度わかるようになってきた。
たくさんの仕事から、そうして仕事の振り分けをすることも、私たち上に立つものの仕事なのだ。
それを学ぶことができた。
これからもたくさんのことを学び、一人前の人間として認められるよう頑張ろう。
あっという間に領地へ到着し、オリバー殿に迎えられる。
テッドもクエンティン殿に支えられながら、馬車を降りる。
明日は選挙の候補者公募直前の会議がある。
婚約解消はおそらくそこで行うだろう。
「オリバー殿、お話しせねばならないことがございます。お時間いただけますか?」
叙爵式の報告などのことだと思っているようで、オリバー殿はニコニコと穏やかに微笑んでいる。
「もちろんでございます。では昼食をご一緒にいかがでしょう?」
「ではそうしましょう。食堂ではなく、私の執務室でも良いですか?」
オリバー殿は、人払いが必要だということを察してか、少しだけ真顔になった。
「承知いたしました。」
エレナに昼食を執務室へ2人分運ぶようお願いし、オリバー殿と移動する。
「クレア様、何か問題があったのですね。テッドのことでしょうか?」
少しだけオロオロとしているオリバー殿に、ここでは言えないことなので、少しでも安心して頂けるよう声をかける。
「いいえ。私のことなのですよ。テッドのことは何も問題なく、テッドもクエンティン殿もよくやってくれました。」
少しホッとしたようだが、緊張した様子である。
ようやく私の執務室へ到着すると、扉が閉まるや否や、オリバー殿は問いかけてくる。
「クレア様、ご相談とは?」




