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お茶の後朝食を終え、執事長さんからセドリック様からのお返事をお聞きした。
「セドリック様からのお返事ですが、『本日も仕事のため城に上がる故、こちらから訪ねることとしよう。朝食後に部屋で待っていてくれ』とのことでした。」
「ありがとうございます。早くからすみませんでした。本当にありがとうございます。」
ありがたさで胸がいっぱいだ。
執事長さんへも、セドリック様へも。
朝食後、部屋で待っていると、セドリック様がいらした。
エレナはお茶を淹れると退室した。
「クレア嬢の相談というのは昨日のことだろうな。」
「はい。パーティー後もここにいらっしゃって、殿下のことを好きになる可能性が0ではないなら1年でも2年でも待つと。私との婚姻が叶わぬなら生涯独身でいるとまでおっしゃいました。」
要約してあのパーティー後のこともお伝えする。
「あいつもまさかそんな脅しのようなことをするなんてな。王家の血筋のためにも婚姻は絶対だろうに。君も大変なのに目をつけられたな。ははは。」
セドリック様はなぜか嬉しそうに笑い出す。
「なぜ笑っておられるのですか?私はどうしたものかと戸惑っておりますのに。」
私はもう半泣きな状態だ。
「すまんすまん。我が甥ながら随分攻めるなと感心しつつ、君がこの縁談を受けてくれたら私たちはもっと頻繁に会えて嬉しいなと思ったのだ。アーノルドのことを思うと、君が幸せになることが1番なのだがね。」
なるほど。セドリック様はこの縁談はむしろ進めたい派でいらっしゃるのか。
「それで君はどうしたいの?全く有り得ないと断るの?それとも可能性を確認するためにいくらか時間を貰いたいの?」
どうしたいかだなんて。
「わからないのです。ゴールドガーデンや王国のためにもどうするのが正しいのか。私は領主ですし、もしお受けするならあとをどうするかなども検討が必要なのです。そもそもの次元のお話では、私のような立場では王太子妃に相応しくないと思います。そのような教育も受けていませんし、身分も新参の伯爵。しかも後ろ盾もない。これでは国にとってのメリットがございません。そう考えるとお断りするのが最善かとおもうのです。しかし、殿下のお気持ちを尊重するならば、できることをやり尽くさねば諦めきれないという気持ちも理解できます。1年だけお時間を頂いた上でお断りするのが良いのでしょうが、お断りするつもりで殿下の貴重な1年を無駄にしてはいけないと思うのです。どうするのが良いのかわかりません。」
エレナとも話をしていたからか、選択肢としてはしぼってセドリック様へお伝えできたと思う。
「君はマーティンが嫌い?」




