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中々寝付けなかったが何とか眠れ、目が覚めたのはやはりいつも通りの時間。
私の体内時計の正確さって素晴らしいと思う。
あまり早くから手紙を出さないため、7時ごろまで待ってみた。
さて、誰かに手紙をセドリック様へ届けて頂き、お返事を聞いてきて頂かねば。
部屋から出てみると、執事長さんがいらした。
「クレア様、おはようございます。いかがなさいましたか?」
「セドリック様へお手紙をお届け頂きたいのです。お返事も。お返事は口頭で結構なのですが。私がゴールドガーデンへ戻る前に是非ともお会いしたいという内容でして。本日お時間を頂けるか、ご訪問させて頂けるかをお伺いできたらと思いまして。お願いできますか?」
執事長さんは快く引き受けてくださった。
「セドリック様のお屋敷はここから馬で10分程度ですので、すぐにお持ちします。お返事は口頭で伺えばよろしいのですね?」
「はい、朝から申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いいたします。」
そして手紙をお渡しし、お返事をそわそわしながら待つ。
私の様子を察してか、エレナが朝食前にお茶を持ってきてくれた。
「クレア様、お茶をお持ちしました。」
扉が閉まると、ふぅとため息をついた。
「時間外ですので失礼。クレア、あまり寝られなかったのでしょう?昨日の叙爵式の余韻で興奮してだなんて思ってないわ。殿下のあの件。あなたのことだからきっと悩んでいるに違いないと思って。私ではこの件を解決できる力はないけど、あなたの気持ちの整理という面ではいくらかは役に立てると思うわ。」
エレナの気遣いが嬉しい。
「ありがとうエレナ。その通りなのよ。何とお返事したら良いのか、どうすべきなのか、答えを出せずにいるの。今セドリック様へお手紙をお出ししたわ。お会いできればご相談させて頂こうと思って。私の気持ちだけではどうにもできない内容だし、ゴールドガーデンや王国の今後にも影響があることだから、慎重に動きたいのよ。」
「そうね。それが良いと思うわ。殿下がクレアのことを想っていることは察していたけど、まさかこんなアグレッシブにグイグイ来るなんて思ってなかったわ。」
私も。
本当に驚きしかないわよね。
「実はね、殿下からのあのお話は陛下との謁見で婚約解消をご報告した時に、陛下の御前でもあったのよ。陛下にたしなめられて一旦終わったと思った矢先に、パーティーでのあれよ。もう私どうしたら良いやら。」
半泣きだ。
お断りするつもりだし、当然お受けできないこと。
しかし、相手は王族で、大勢の前での求婚。
殿下に恥をかかせることなく、正当な理由で殿下にも、周囲にも納得して頂ける結果に落としたい。




