139
テッドも周りの方々から何やらスカウトを受けているようで、楽しそうに話している。
今後ゴールドガーデンを離れて旅をすることまでは皆は知らない。
しかし、婿候補から外れたことから、仕事について色々な業種から声がかかっているようだ。
テッドの今後のためにコネクションができるのはとても良いことだ。
中盤までの気まずい感じは無くなり、後半は楽しく皆様との交流を楽しんだ。
今後ハーブ園や工芸などの流通にもコネクションができたし、ご令嬢たちからもお茶会でどういうお茶やお茶菓子があれば良いなどの参考となる話もきくことができた。
エレナも今後の展望が更に具体的に見えてきたことに喜んでいる。
今回のハプニングというのか、マーティン殿下からの求婚についてを除いては、有意義だった。
求婚について『嫌』とかそういったマイナスの感情はない。
ただただ、何をどうお返事したら良いのか、対応がわからないことに困惑したのだ。
殿下が嫌いなわけではない。
かといってお慕いしていると言っても恋愛感情ではない気持ちでしかないのだ。
殿下との関係については、一体誰に相談したら良いのだろう。
テッドに相談するのは違う気がする。
オリバー殿に相談するしかないのか?
エレナに相談しても、気持ちの整理程度にしか解決できないだろう。
とにかく、私1人でどうにかできるものではない。
帰りの馬車の中でまずはエレナに相談してみよう。
それで私の気持ちをどう殿下へお返ししたら良いか、ある程度整理できるかもしれない。
戻り次第でオリバー殿にも相談して、今後のことを決めよう。
あるいは、しばらく答えが出なければセドリック様を頼るのもありなのかもしれない。
セドリック様ならば、私のことも、殿下のことも中立的なご意見を下さるだろう。
パーティーは終わったが、色んなモヤモヤした気持ちも抱えつつ、楽しむこともできたにしても、不完全燃焼な感じで客間へ戻っても中々落ち着かなかった。
追い討ちをかけるように、殿下がお茶をと訪ねてこられた。
「クレア、さっきは悪かった。私の気持ちを優先し、そなたの立場などを考えられていなかった。ただ、私が冷静でなくなるほどに、そなたへの気持ちは真実なのだ。すぐに返事をくれなくとも良い。エドワード殿との婚約の時のように、1年考えてからということでも私は良いのだ。今、この場で断られるより、1年でも良いからクレアと私との未来を考えるチャンスをもらえないか?」
殿下は真剣なまっすぐな瞳で私へ想いを伝えてくださる。
その真っ直ぐな視線は、私を捉えて離さない。
動けない。
ようやく口を開き、何とか言葉を紡ぐことができた。
「ありがとうございます。そのようにもったいないお言葉を頂き、有難い限りです。殿下のことは臣下としてお慕い申し上げております。それに、先ほども陛下の御前でもお伝えいたしましたが、私では身分も不相応です。更には私は領主としての立場もございます。万が一にもこのご縁談をお受けするとしても、我がディアス家は私が実質的な最期の1人です。従って今後のゴールドガーデンをどうするのかという重大な問題でもあります。様々な条件を考慮しても、私では殿下に相応しくありません。」




