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「ゴールドガーデン伯、クレア・ディアスとエドワード・グリーンの婚約解消を認める。この件で不服のあるものは国王の意に反するものとして周知していくことを認めよう。」
私とテッドはこうべを垂れる。
「クレア殿、私ではダメだろうか。私の妻にはなってくれぬだろうか。この場でこのようなことを申すべきでないのは重々承知しているが、機を逃すとあなたを失ってしまうのではないかと不安なのだ。陛下、私がクレア殿へ求婚することをお許しいただけないでしょうか?」
その場に控えるもの全員が驚いた。
国王陛下と王妃様は何となく予想していたのか、ため息をついていらっしゃる。
「この場では確かに相応しい行いではないな。ただ、父として、人として失いたくない人への想いを伝えたい気持ちは尊重しよう。今この場ではなく、一晩お互い考えてまた明日気持ちを伝えてはどうだ?クレア殿においてはお返事は明日その場でなくとも良いので、すまぬが考えておいてくれないだろうか?」
陛下も親心の方が勝ったようだ。
とりあえず今日はこの話は出ないだろう。
ひとまず安心だが先延ばしになるだけ。
「承知致しました。考えさせて頂きます。しかし、私も領主としての立場がございます。また、ディアス家の血を引く事実上最後の1人。殿下のご意向に沿えぬ可能性の方が高いことをご了承頂きたいと思います。」
求婚に応じることはできないことをアピールしておく。
期待させてしまうのは申し訳ないから。
「それでは、それぞれの幸せと、今後の活躍を願っておる。これにて一旦お開きだ。叙爵式がそろそろであるからな。後ほど案内を寄越すゆえ、客間へ戻られると良い。」
陛下のお言葉に、皆礼をして下がる。
エレナはどこまで支度が済んだだろうか?
手伝えたら良いが。
そう思って客間に入ると、エレナが半分だけ化粧を施した姿でドレッサーの前に居た。
「え、ん?…エレナ?」
なぜ半分だけなのだろう?
戸惑いを隠せない。
「あ、えーとですね…。遊んでたのが半分、侍女として品位を保ちつつ控えめな化粧を施すため、顔半分で確認しようと少しずつ少しずつ…ぷぷっ」
2人で戸惑いながらしどろもどろなエレナに同時に吹き出してしまった。
「緊張の糸が切れる瞬間を初めて感じたと思うわ!プツッとね!あなたってやっぱり最高よね。その顔多分一生忘れないわ。」
「お役に立てて何よりでございます!肖像画として残してくださってもよろしいですよ?」
2人で盛大に笑い合い、笑いすぎて涙が出て化粧が崩れそうな私も、再度化粧を施すこととなった。
「エレナ、お願いだから半顔じゃなくて全顔整えてちょうだいね?」
思い出し笑いを堪えつつも、ほんの少しの心配を伝える。




