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「クレアが輝いていればそれが1番よ。私の目論見としてはこれからの王都の流行は今日のクレアがつくるとさえ思っているわ。しばらくはウィステリアブームが来るはず!そうよ、ハーブ園に藤棚を作る?育つからにはブームが去ってるかしら?」
ひとしきり笑いあって、他愛のない話をしているうちに王都へ到着した。
門を通り抜け、城下町を見ながら通過していく。
活気のある通りを見ていると、商業の大切さを感じる。
街の人々の暮らしぶりがある程度豊かであることも、街の活気に繋がっている。
ひとたび街から外れたら、エレナから聞いたハオマたちのいたような貧困街もあるのだろう。
いよいよ王城へ着き、城へ入る。
大臣たちが迎えてくれ、一旦客間へ通される。
国王陛下との謁見までしばらくの休憩だ。
休憩とは言っても、女性は身支度に時間がかかるものだ。
したがって、ひたすらに謁見・叙爵式・パーティーへ向けての身支度をする。
着替えも化粧も、結髪もエレナがしてくれる。
エレナの支度は陛下との謁見中に自分でするのだそうだ。
私も手伝いたいのだが、時間が無いことに加え、不器用なのだ。流行にも疎い。
本当に残念だ。
男性陣は燕尾服に着替え、髪を整える程度なので、少しは休憩できそうだ。
叙爵式では私の侍従としてテッドとクエンティン殿が参列してくれる。
緊張が高まる。
どんどん表情が強張るのを実感している。
「クレア様、お着替えが済みましたら一旦お茶をお持ちしますね。お茶を飲まれてからお化粧を施していきましょう。髪のセットも。」
そういって、ありがちなコルセットやらペチコートやらを装備して、ドレスを着ていく。
戦へ行く兵よりも装備品が多いのではないかと思う。
命はかけないが、社交界はある意味女の戦場なのだろうが。
無事にドレスを着ると、ドレスを汚さないように前掛けをしてからお茶をする。
温かいハーブティーに緊張がすこし和らぐ。
そういう効果のあるハーブティーを選んでくれているエレナにも感謝だ。
「コルセットで締め付けられると、苦しいし、締め付けで血の巡りも滞るから余計緊張してしまうのよ。すこしリラックスしてからお化粧をした方が綺麗に仕上がるわ。」
そういって、お茶を終えてから化粧などを施す。
事前にドレスを着てのマナーやダンスの練習もしていたが、いざ化粧や髪のセットまでしてもらうと、自分ではないような気がする。
ほんのりと桃色の頬に、青みがかったピンクの紅。
髪はアップにして、藤の花を模した揺れる下がり飾りを付けている。
ネックレスやブレスレットも藤の花のようなアメジストのものだ。
どこの令嬢にも見劣りしない自信がある。
「エレナ、ありがとう。今日の主役らしく、誰よりも輝き、自信と誇りを持って過ごすわ。」
大きく頷き、国王陛下との謁見へ向かう私を見送ってくれた。




