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「そなたは美しいだけでないのがずるいのだ。天は二物を与えずとは嘘だな。そなたの聡明さは驚くべきものがある。そなたが男ならさぞ出世するだろう。下手すれば一国を手にする器かもしれぬ。私は剣術ばかりで勉強をあまりしてこなかったゆえ。そなたが私と共に歩んでくれれば良い政治ができる王となれると思うのだがな。私は本気だぞ。王太子としての力を使ってでもそなたを手に入れたい。」
褒めちぎった挙句にまた求婚され、どうしたら良いのかととまどってしまう。
「殿下はお優しい方です。力ずくで人をどうにかするような方ではありません。なので安心してここにおります。油断できない方でしたら私は一旦戻り、明日にまた登城したでしょう。殿下はいつも私を気遣ってくださいます。大変有り難いと感謝でいっぱいです。」
そう答えるのが精一杯だ。恋愛経験値が低すぎるどころか、対人関係スキルが低すぎるため、どう返答して良いのかわからない。
「これで15歳とは末恐ろしいな。王都にいれば最高の家庭教師を付けて学ばせることができるのだが。もったいない。もっと学んでこそ政治に活かせるのではないか?そなたの最初に手がけた生産についての取り組みは見事であった。農業だけでなく他の分野でも成果を上げ、ゴールドガーデンが豊かになっているな。これはまだ決定ではないが、どうせ明日議会で検討事項に上がるため今言っても差し支えあるまい。そなたに爵位を贈るように国王より提案があったのだ。ディアス家は元々伯爵家だ。爵位を返還したため一貴族となってしまったが、戦後の混乱も落ち着き復興を遂げ、ゴールドガーデンは繁栄しつつある。それは国全体の繁栄にも繋がるためこれは妥当なことだ。元の伯爵位とするか、侯爵にでも…というのが明日の議会の議題の一つだ。良かったな。」
殿下のお話しに頭が付いて行かず呆ける私に、優しく微笑み頭を撫でてくださった。
人に頭を撫でてもらうなんて、記憶にないくらいだからきっと両親が存命中以来なのだろう。
温かな大きな手の優しさに涙が止まらなくなった。
「クレア嬢、泣くほど喜んでくれるのか。お父上も草葉の陰からお喜びになられているであろうな。ゴールドガーデンのますますの繁栄はそなたにかかっておるのだ。爵位に甘んじ驕ることなく精進せよ。」
泣きながら頷くしかできない私を、ずっと撫でてくださる。
最早涙が爵位を賜ることの嬉しさなのか、両親を思い出して寂しいのか、人の温もりに安らいだのか…
自分でもよくわからない。
今は殿下の肩を借りて止まらぬ涙をどうにもできずに途方に暮れる。
「殿下、ありがとうございます。殿下の手はとても温かく優しいのですね。」
そう言って殿下へ視線を移すと、真顔でじっと見つめられる。
「クレア…なぜそなたは私を魅了するのだ?この腕の中に閉じ込めたくなるではないか。私の手が温かだと申すのなら、いくらでも触れるが良い。そなたが求めるならばずっと温めてやろう。」




