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静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
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テッドの同行者はやはりクエンティン殿で問題ないようで、クエンティン殿からも同行の了承を得た。

衣装の仕立ても正装として格式の高い生地やデザインを選び、王城でも失礼のないようにしていかねば。

華美にしすぎないようにするのと、出来るだけコストを抑えたいが、長く着ると仮定して良いものを仕立てておくのはありか。


国王陛下へのご報告に向けても会議のたびに報告書を更新し、簡潔かつ正確なものを作成している。


ハーブ園についても土地を確保し、農夫を一時的に雇い、土作りを始めている。

移転の具体的な日程は未定だが、次の会議で日程も決め、人員を確保していく。


着々と全ての物事をすすめ、おそらく順調だと思っている。


テッドの回復状況は順調なようだ。

王都で国王陛下へ婚約破棄をご報告し、戻り次第領内外へ通達を出すことに変更はない。

発表についてはテッドに一任するため、私は発表を待つのみ。


皆で役割を分担して全てを進めているつもりだが、果たして私が主体となって動けているのはどの程度だろうか。

統括メインで、私が頑張っているわけではない気もする。

ある意味理想的とも思うのだが、周りから見たら私は居ても居なくても同じなのではと思われないかが心配になる。


私は自分の存在意義や価値が明確でないと不安なものだ。

必要とされるには私が皆の分も頑張っていく必要があるだろう。

しかしそれでは私には力不足だし、私の権力ばかりが強くなってしまう。


必要とされたい。

信頼されたい。

愛されたい。


以前は自分が切り捨てられないように、頑張ろうとしていた。

次は私が居なくても皆が混乱しないようにと皆の為を考えるようになった。

今はその上に私が皆に認められ、求められることを望んでしまう。


こうして考えてみると、私の中の軸となる思いが変化していることに驚く。

私が居ても居なくても皆が混乱しない仕組みを作るということは、私が居なくなることも視野に入れての前提だが、裏腹に皆に認められることや、求められることを望むというのは相反するようでもある。

このような真逆とも言える気持ちがこの数ヶ月に何度もある。

嬉しいと悲しいが同時に来るなどだ。

本当に不思議なものだ。


私は幸せだ。

だから幸せをくれた皆にも、もれなく幸せになって欲しい。


しかし、今はまだそれができていない。

私が幸せにしたい身近な人々は、私に幸せをくれるばかりで、私は頼って甘えているばかりで、私は何もできていない。


いつになったら実現してくれるのだろうか。

いつになったら実現させられるのだろうか。


確実に前へは進んでいる。

それは、皆が私に手を差し伸べて、導いてくれるからだ。

それを忘れずにいよう。

今はまだ仕方がない。

こうしてグズグズ考えてしまうところもまだまだ変わらない私だけど、色んな経験や感情に直面し、確実に成長はしているだろう。


出来ることを全力で。

それは変わらない。

私への評価は、私ではなく、民がするのだ。

愚かだと評価されても良いから、皆の幸せを願える領主でありたい。


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