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私もテッドの決断を了承した。
「ありがとうございます。クレア様、あなたをお支えできませんことを大変申し訳なく思います。今後のあなた様がますます輝き、民を善く導いてくださることを、そしてあなたが幸せであることをお祈りいたします。」
「今そんなことをおっしゃるなんて、もう会えないみたいじゃないですか。お別れの時に改めておっしゃって。私もあなたが自分の道を見つけられると信じて、毎日祈りますわ。あなたの幸せを。」
成り行きを見守ってくださったオリバー殿は、泣きそうな、それでいて清々しいようなお顔であった。
大切な一人息子を勘当し、旅に送り出すと言うのだ。
妻に先立たれ、唯一の家族。何ものにも代え難い大切な存在であることは言うまでもない。
「オリバー殿、あなたにも辛い思いをさせてしまいますわね。辛い決断をさせました。本当に申し訳なく思います。」
オリバー殿は笑顔で応える。
「いえ、元々は婚約というのも私が勝手に進めてしまった話。むしろ私の方こそ申し訳なく思います。テッドが居なくなるのは確かに複雑な思いがありますが、私は親としてテッドの成長を嬉しくも思います。自分で身を立てると男が口にしたのです。私も男としてアイツのことを信じ、待とうと思います。」
三者三様に決意を固める。
その決意の中にある想いは同じ。
互いが、皆が幸せであること。
テッドは人生を自分で切り開き、身を立て、どのような形でもゴールドガーデンのために力を発揮できる道を歩む。
私はゴールドガーデンを発展させ、人々を幸せに導く。
オリバー殿は息子を想い、ゴールドガーデンでの自身の立ち位置を自覚し、それぞれを見守り支える。
3人ともうっすらと涙を浮かべながら、話し合いは終了した。
婚約破棄の発表はテッドに任せることにした。
私はいつでも受け入れる。
いつかまた一緒に笑える日を夢見て、全力で前へ進んでいくのだ。
「ではクレア様、私が動けるようになりましたら、正式に発表致しましょう。また時期が迫りましたらご相談させて頂きます。私のわがままであなたを傷つけてしまうことになり、本当に申し訳なく思います。あなたには絶対に幸せになって頂きたい。」
テッドの思いを受け止め、私も想いを返していく。
「この世に絶対は絶対にないそうですわね。ですが私、絶対にゴールドガーデンの皆様を幸せにして、私自身も幸せになりますわ。絶対に。ですからあなたも絶対に幸せになりますわ。」
皆の未來が幸多からんことを。
その礎を築いていく。
私たちの決意を互いに胸に抱き、進む道は別れるが、行先は同じであると信じている。




