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静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
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「では結論と致しましては『婚約破棄は破棄。クレア様は変わらずに領主としてゴールドガーデンを治めていただく。エドワードは傷が癒えたら勘当し、身を立てるまでは帰城は許さない。エドワードが出て行くことを公表する際に婚約破棄も公表する。』これで良いですか?婚約破棄は早くとも良いかとは思うのですが。特にクレア様の次のご縁談のためには早めの公表の方がよろしいかと。」


オリバー殿が結論をまとめてくれた。


「嫁ぎ先あるいは婿入りしていただく候補があるのでしたら早くとも構いません。しかし、まだそういった目星もつかない時点での公表にはメリットを感じません。領民たちの混乱のデメリットしか見えません。婚約破棄をして、テッドが出ていけば、『怪我のため働けなくなった婚約者との関係を解消した挙句に追い出した』と言われそうですね。」


私が周りからどう見られようと構わないのだが、それがゴールドガーデンに不利益となるなら困る。


「クレア様との婚約は私から破棄する旨を先に公表致しましょう。私が領主としてのクレア様を支えられる器ではなかったということで。その上で私は出て行きます。そうすればクレア様への中傷も防げましょう。全ては私のわがままによるものです。この件の全ての責めは私にあるのですから。後ほど公表のための文書を作成致します。ご覧頂きまして修正などあれば行い、問題ないようなら一か月後に公表いたしましょう。」


テッドが決意のこもった表情で提案した。

たしかにテッドから公表されれば少しは周囲の受け止め方も違うだろう。


「テッド、本当にそれで決定なのですか?あなたはそれで良いのですか?何もかも失ってしまうのですよ。ここに残れば、地位も名誉も、仲間も全てあるのですよ?」


なぜ全て投げ打って人生をリセットするとでも言うような選択をするのか。


「クレア様、それは違います。今までの私は父や周りにいる方々に作られた言わば虚像です。私の実力だけでは革命の中心にいることも、あなたの婚約者となることもできないような凡庸な者です。私は確かに逃げます。あなたから逃げます。しかし、自分の持ち得る力を発揮できる場所を自分の力で探し、再び自分に自信を付けたいのです。このままでは私は卑屈な気持ちを抱えたまま生きていかねばなりません。今後私が成功できるかはわかりません。このまま与えられるだけの人生ではなく、自分で切り開く人生を歩みたいのです。」


テッドの決意は固いようだ。

いくら何と言っても意志を曲げることはしないだろう。

元々テッドはそういう人間なのだから。

正義感が強く、思いやりがあり、芯の通った強い人。

そんな人でも芯がぽっきり折れてしまうのだ。

骨であれば、一度折れたところは適切に処置すれば治癒とともに強くなる。

適切に処置できなければ後遺症となる。

テッドの折れた心も、適切に対処出来れば彼にとって人生の糧となる。

このままここにいることと、旅に送り出すこと、どちらが正しいのかわからない。


「それがあなたのためになるのなら。私は受け入れましょう。いつでも戻ってきてくださいとは言えません。あなたの望む人生を見つけ、歩んでください。」


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