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王城で開催されるパーティーに何度目かの出席をすることになった。
パーティーの度にマーティン様からダンスを申し込まれ踊るのだが、今回もきっとそうなるだろう。
テッドは貴族ではない為パーティーへは参加できない。結婚すれば同伴できるが。
一応婚約者なので同伴できなくはないが、作法を身に付けていないためまだ同伴させることができないのだ。
会場に着くと、ご挨拶を一通り済ませてシャンパンを頂いているとダンスの時間が来た。
王太子殿下の1番最初の相手として申し込まれた。
毎回そうだ。一番手。
しかも何度も次も次もと誘われるのだが、他のご令嬢も王太子殿下とのダンスを期待しているため私が独占するわけにはいかない。
ダンスをしやすいよう少しだけ丈を短くしつつも回るとふわりと揺れるような幾重にも重ねた薄絹のドレスだ。
「そなたはいつ見ても美しいな。そのブロンドのゆるくウエーブのかかった髪も、色白で滑らかな肌も、淡いブルーの瞳も、華奢なからだも、全てが芸術のようだ。肖像画を描かせると良い。国宝になるのではないか?」
きっと女慣れしているのだろうか。よく容姿を褒めてくれ、優しくエスコートしてくださる。
「私の肖像画なんて飾る必要ありませんもの。不要なものを作る時間があればもっと大切なことに時間を使いたいですわ。」
私がそう言うと、
「わかっていないな。そなたのような美しい者は居るだけで芸術的な意味があるのだ。肖像画が私の部屋にあったなら、私は一日中でも眺めているだろう。今1番大切なこととはなんだ?」
踊りながらも会話を楽しむ。こうして殿下は私に必要なものを聞き出して手助けしてくださるのだ。
「今私は領地に議会を置こうと思っておりまして。その選出や運営について村長たちを集めて意見交換会を開催しているのですが、各村ごとの代表の選び方で意見が分かれていてどうしたものかと。そのことで頭がいっぱいなのです。選挙制とするには時間と労力を使う。世襲制で村長の家系で対応するのも民意がきちんと反映されるかわからない。村の集会で話し合いで決めるとなると力のあるものの発言が何より有力となるため公平ではない。そんな感じで意見が中々まとまらないのです。あとは貴族からも何名か選出して色々な立場から多くの議論ができるようにしたいのですが、貴族側の選出もどうしたら良いやら。」
殿下も少し考えながら、一言。
「たしかに難しいな。王都では試験に合格し仕官したものの適性を見て部署へ配属し、能力のあるものを出世させ、議会へも加えている。もちろん公平かと言うと貴族で金のあるものが賄賂で登って行くこともある。完全に公平で公正なものを作ることは不可能なのではないか?」
王都の運営についてのお話をしてくださり、なるほどと思う。
完璧は不可能。しかし少しでも完璧に近づけたいのだ。
「何か良いお知恵はありませんかねぇ。」
ため息をつく私に一言、
「王都の議会を見てみたらどうだ?確かに議員の選出は大事だ。だが、話し合いの内容や決議の仕方などによって議員の力量だけでなく議会全体のまとまりと言うか、議会の力を発揮できる運営こそが大事ではないか?」
「王都の議会の見学だなんてそんなことができるのですか?お許しをいただけるのなら是非見学させて頂きたいです。」
王太子殿下からの口利きなら間違いなく可能だろう。
期待に胸を膨らませる。
「明日の予定は?直近では明日の午後に議会が招集される。そなたの都合が良ければこんばんは城に泊まると良い。明日の議会が終わるまで滞在を許そう。」
明日は書類の処理くらいしか予定はない。あとは会議の資料作成くらいだが、議会の見学後に改めて作る方が良い資料ができるだろう。
「ありがとうございます。それでは明日までお世話になります。何から何までありがとうございます。」




