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ひろいました


 気が付くと海外によくある神殿のような場所で立っていた。

 等間隔に並んだでかい柱や博物館にありそうな彫刻があって、全体的に白い。中学生のころに歴史の授業で習ったギリシャの神殿に似ている気がする。

 見渡しても薄暗いのでよくわからないが、ここはもしかしたら博物館なのかもしれない。なんか芸術的なものいっぱいあるし。

 しかし、そうなると矛盾が生じてしまう。なぜなら、俺はついさっきまで家のソファでくつろいでいたからだ。今日は学校が早く終わって特になにもすることがなかったので、ぼーっとしながらテレビを見ていたはずだ。

 これは夢か。そう考えると合点がいくが、妙にリアルだなこの夢は。意識ははっきりしているし、服装は家にいたときと同じ部屋着のジャージだ。あとちょっと肌寒い。足は裸足だからめっちゃ冷たい。


「だれかいませんかー?」

 

 返事はないし、思っていた以上に響いた。結構広いのかここは?本当にどこなんだろう。

 なんだか怖くなってきた。すごい静かで誰もいないみたいだし、暗くて周りがよく見えないし。とんだ悪夢だなこれは。

 怖いのでしばらくじっとしていたら目が暗闇に慣れてさっきよりもいろいろ見えるようになってきた。

 自分がたっている場所。なんとなく広いとは思っていたが前方と後方に伸びていてでっかい廊下になっている。そして左右の壁にはところ狭しと彫刻が掘ってあった。内容はとりあえす人がいっぱいること以外はよくわからない。


 依然としてここがどこであるかは全然わからないが、とりあえず前に進むことにした。

 体感にして十分、足がかじかんで感覚がなくなってきたためそろそろ休もうかと思ったところで、壁が見えた。行き止まりだろうか。

 近づいて確認してみると、そこには大理石で作られた教卓くらいの大きさの台があった。ぐにゃぐにゃした模様が掘ってある。おそらく祭壇みたいなものだろう。

 そして、祭壇の上には奇妙なものが奉られているように置いてあった。


「なんだこれ……」


 魔法少女アニメに出てくる変身ステッキがあった。牛乳パックくらいの長さの白い棒いにかわいらしいピンクの模様が施されており、先端にはでかい星がついている。

 昔よく見ていた日曜日の朝に放送されている魔法少女アニメを思い出した。今となってはなぜ見ていたのか理解できないアニメだ。

 それに変身アイテムみたいな棒がなぜこんな荘厳な神殿?の祭壇にまつられているんだ?

 手に取って確かめてみる。触感は玩具によくある硬くて軽いプラスチックだ。


『やっと来たか』


 渋い声がしたと同時にステッキがピンクに光った。


「うわっ」


 突然のことに驚き、思わずステッキを放してしまった。カランと軽い音を立てながら地面に落ちる。


『おお!痛いではないか……やれやれ』


 ステッキから音声が鳴ると同時に、それはゆっくりと起き上がり、宙に浮いて大体俺の顔くらいの高さまで上昇した。



「ステッキが……飛んで、しゃべってる」


 最近の女児向け玩具は宙に浮くまで発達したのか。光るしゃべるならまだ理解できるが、ぬるっと宙に浮く玩具など聞いたことがない。話す声質もダンディで渋いおじさんみたいだし。


『お前が契約者か?』


「は?俺?違い……ます」


 訳がわからなすぎてとりあえず否定してしまった。


『お前が我の眠りを覚ましたんだろう?』


「えー、え?じゃあ……多分そうです。はい」


『じゃあ、契約者だ』


「はぁ」


 契約者ってなんだ?魔法少女か?俺変身すんの?魔法少女に?

 このステッキはもしかしたら魔法少女系アニメ定番のマスコットキャラなのかもしれない。変身アイテム自体がマスコットキャラというケースは見たことないが……。

 いや、じゃあなんで男の俺なんだよ。あー混乱してきた。


『お前、いや契約者よ。名はなんという』


 ピンクの光を点滅させながら、横にぐるぐると回転している。ピンクの光が結構強くて目が痛い。


「……穂村縁治(ほむらえんじ)……です」


『ホムラエンジ?奇妙な名だな。ここの国の者ではないな。』


「え?そうなんですか……」


 今で生きてきてそんなこと言われたのは初めてだ。まぁおもちゃが話す夢の世界だし仕方ないか。


『なにはともあれ我とお前は契約の関係になる。さぁ、手を出せ』


 回転が止まり、俺のことを除きこむように少し上昇する。

 契約?ステッキ?奇妙な名前?国?

 先ほどからなにがなんだか全然理解ができずに混乱の極みに至った俺は、言われるがままに右手を差し出す。

 どうせ夢だ。


『では始めるぞ』


 ステッキはそう告げるとより強く発光した。


「うっ!」


 差し出した右手から方にかけて突然重くなった。おもわず上げた腕を下ろしそうになったが、右手の甲が何か見えない力に引っ張られていて、下ろすことができない。

 激痛ではないが、成長痛のようなじわじわ来る痛みが腕に走っている。

 光はどんどん強くなっている。光源から顔を逸らしてもピンクしか見えないくらいだ。

 そして、右手に重圧がかかり始めてから数秒後、なんだか体がだるくなってきた。


「はぁ……はぁ……」


 体が重い。上り坂を全力疾走した後みたいだ。光が強くなるにつれて体のだるさが大きくなってきている気がする。なんでだ?もしかしてこのステッキ俺の精気を吸ってるのか?

 立てない。だめだ。座ろう。

 右手を挙げたまま膝をつく。ステッキは何も言わない。

 意識が朦朧としてきた。頭がよく回らない。こいつは一体どうやって俺から精気を吸っているんだろう。

 少なくとも日本では精気を吸い取る存在はない。と思う。たぶん。

 神殿みたいなところで変身ステッキに精気を吸わるなんてずいぶん無茶苦茶な夢だな。いや、夢なんて大体そんなもんか。

 ああ、もうそろそろ限界だ。膝をつくのもかなり辛い。


『契約完了だ。ホムラエイジよ。お前を――』


 右腕が重圧から解放されてその声を聞いた瞬間、ピンクの光に包まれながら俺は意識を失った。



初投稿です。

楽しく書いていけたら楽しんじゃないですかね

ちなみに好きな食べ物は線香です

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