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14 ファイアインザホール 下

 俺たちは墓標を後にして歩き始めた。俺とリズ、ミーナとガウナ、ソランジュさんのメンバーが先頭だ。並んで歩いてはいるが、無言である。


 少し歩いたところで、皆で円を作って座った。


「先ず、ミーナとガウナの扱いについて話したい。俺としては、彼女とガウナを引き取りたいと思っている」


 まだミーナのことを何も知らないわけだけど、彼女はこの世界において貴重な存在だ。邪龍である彼女と仲良くできれば、大きなメリットがある。そして俺は、ミーナやガウナに罪滅ぼしがしたい。さっきの葬式を終えて、そう思ってしまった。俺が引き取らなければ、彼らの境遇は悪いものになるだろう。葬儀を終えて皆がセンチメンタルになっている今がチャンスだ。


「ミーナとガウナは、俺のところに来るのは嫌かな」


 ミーナはガウナの首回りを撫でている。二人にとって俺は、この場にいる中で最も憎むべき相手だ。


「いやじゃないよ」


 ミーナはそれだけ口にした。周囲の騎士たちは、流れの悪さを感じ始めた。「このままだと大精霊が引き取ることになる」とか「大精霊はアイツらをどうするつもりなんだ」などといった声が上がる。アストリッドも困った表情をしていた。リズに何も相談しないで言ったことだが、リズは俺のことを信じてくれているようだった。


「アストリッドはどう思いますか?」

「私は……そうだな、今のところは二人に預かってもらうのが一番だと思う」


 今のところでも預かってしまえばいいだろう。大精霊が保護した彼らを取り上げるとなると、俺はそれに対する行動を正当化できる。アストリッドの意見に、皆から反対は無かった。


「ミーナ、ガウナはお利口にしていられる?」

「ガウナはおりこうさんだよ。あなたたちをおそわなければいいんでしょ。ガウナはわたしたちをころそうとしなければ、おそったりしないよ」

「分かった。とりあえず、ミーナ達は俺が預かります。反対意見や、提案があったら言ってください」


 真っ先にステファンが手を挙げた。


「俺もお前達が手を出さないってんなら危害を加えるつもりはない。だが、お前達が俺達を襲ったら切り刻んでやるからな」


 ステファンがミーナとガウナを睨む。ミーナは無関心そうに片目で見たまま、ガウナを撫で続けていた。









 俺たちはオストフチの街に戻ってきた。今日はもう疲れた……もう真夜中だ。終わってみるとアドレナリンが引いたのか、疲れがどっと出てくる。今は人間じゃなくて精霊だよな俺。本当に人間と変わらないなぁ。すげぇ寒いし。


 各自の宿を取り、解散となった。俺はリズ、ミーナ、ガウナと一緒に寝ることにした。この数が泊まれるように無人のお宅をお借りすることになった。なかなか良いお宅だが、ちょっと泊まらせてもらおう。リビングに入ると、かなり広かった。大きなソファがある。この人数なので、今日はこの部屋で寝ようかな。


「リズ、ごめんな。今日は二人っきりじゃなくって」

「ううん、いいよ。私もミーナとガウナが心配だから」


 目の前にいたリズが右腕にそっと寄ってきたので、左手で頭を撫でる。それにしてもいいお宅だ。大きな暖炉もある。地球を出発したときは新学期始まって四月だったが、こちらでは十月だ。まだ十月だけど結構寒い。地球の東欧諸国と同じなのかもしれない。こっちの世界は一年が地球よりも数日多いが、一日は二十四時間だし概ね地球と同じような暦であるらしい。


「リズはベットがいい?用意しようか?ミーナにはソファで寝てもらおうと思うんだけど」


 ミーナとガウナは部屋の入口に突っ立っていた。なにやらミーナはジト目でこっちを見ている。そういや俺達がベットで、客人なのにソファじゃマズいか。寝室を見に行ってみるかな。


「べつにソファでいいけど。あなたたちふたりって、そういうかんけいなの?」


 そういう関係?ピンとこなかったのでリズを見る。すると何故かリズもジト目になった。


「渉……いや、いい。ミーナ、私達はご覧の通りだから」


 リズは俺の腕から離れ、ミーナに向けて手を広げて苦笑いのような顔をする。


「なんとなくわかった」


 ミーナはそれだけ言うと、ガウナと一緒に部屋に入ってきた。なんかよく見ると、ガウナまで俺のことジト目で見てないか?もしかして俺だけ仲間外れ?


「だからミーナも安心して寝て。私たちは精霊だから一緒に寝るけど、そういう関係じゃないの」


 そういう関係?もしかして男女の関係のことか?そういや、ミーナも女の子デスヨネ。


「いやいやいや、俺はミーナのこと、襲ったりしないからな」


 ミーナは「何のことかわからない」というような顔をしたが、何故か突然ため息をついた。ため息?


「はぁ……わかった。お兄ちゃんがわたしをおそってこなさそうなのは、もうわかったから」


 それを聞いてリズが笑いだす。


「よかったねお兄ちゃん。襲いたくなったら、私のこと襲ってもいいから」


 リズにそう言われてポンポン肩を叩かれる。ガウナは知らんふりして寝てしまった。どうやら俺は、人畜無害判定をされたようだった。まぁ……いいんじゃない?安心してくれたなら。ん?お兄ちゃん?


 ミーナもソファで横になって寝てしまった。こうなったら起こすのも悪いし、おとなしく寝るしかない。リズが、二人とは少し離れたところに毛布を敷いた。手を振ってこっちに来るよう促すので、おとなしく一緒に横になった。


「やっぱり渉は優しい子だよ。だからあの二人はついてきてくれたんじゃない?」


 上半身を起こしたリズに、頭を撫でられる。無言だけど二人とも、ミーナもガウナもまだ起きてるよなぁ……


「俺はリズのこと心配してたんだけどな」


 別方面から反抗を試みたが、笑顔で返された。この場では男の尊厳を取り戻すことが不可能だと判断して、仕方なく、目をつぶって眠りについた。







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