未知なるセカイ
白銀だった景色は少しずつ緑の顔を見せ、
歩道と車道を遮るようにそびえ立つ雪の壁も僕の顔が見えるくらいまで低くなった。
たった数ヶ月なのにこの町の住人には半年以上にも感じる冬もようやく終わりを迎え、
春の陽射しが僕等を祝福してくれてる。
真っ黒の学生服の金色ボタンが太陽の光を浴びてピカピカと光る。
ブルー地に白のパイピングが施されている、決してカッコいいとは言えないリュックカバン。
身も心も真新しいピカピカの中学一年生は期待よりも不安だらけの中、友達との待ち合わせ場所へ向かう。
「おはよ!」
保育園から仲のいい亮と、小学生の時に転校してきた優輔は僕の仲良しのツレ。
3人はクラスが一緒になるのか、どの部活に入るかなんていうよくある話をしながら中学校の道のりをひたすら歩く。
この町の中学校はたった1校しかない為、町中にある5つの小学校から集める。
僕達はこの中学校で初めて町中の同年代のコ達と顔を合わせる。
新しい出会いと、未知なる中学校という世界。
僕は新しい自分を創りだそうと思った。
(僕は1年2組かぁ。亮は1組、優輔は同じ2組だ!)
3人が一緒のクラスにはなれなかったが、仕方が無い。
そんな事より自分のクラスの名簿を見て、他の小学校のコで知ってる人がいるか探した。
(ん~、コイツとコイツはわかる気がするけど… 後は…)
僕の知ってるコはあまりいない。
自分の小学校の同級生の名前を確認して、いざ校舎へ。
小学校までは上下関係なんてものは無く、上級生も下級生もみんな友達の様な関係性だったが、中学にもなると敬語、身だしなみを怠るとどんな仕打ちがくるかわからない。
仲の良かった近所の上級生も、中学では先輩として適度な距離感と互いの上下関係をシッカリと置かないといけない。
ここで培った経験は互いが大人になった今でも変わらず、未だに上下関係は続いている。
今の時代の学生達には古臭いしきたりの1つだと思われているだけだろうけど。
制服の第1ボタンを止める事、短ラン、変形ズボンなんてもってのほか。
一年生は模範通りの格好でなければいけない暗黙のルール。
一年の我慢だと思えばさほど苦しくはない。
僕の天国の始まりと僕自身と僕を取り巻く昼ドラのような環境へのカウントダウンが幕を開けた。