秘密のデート
僕は初めての年上彼女モドキができた。
モドキというのは、相手は僕の事を彼氏だとは思ってはいないから。
それでもよかった。僕はあの人と少しでも一緒にいて、僕を他の人とは違う特別な関係でいれるだけで。
仕事に行くのも苦ではなくなった。
むしろ、自分の頑張りを彼女に見てもらいたくて、頑張ってみる。彼女が作業場に来る時だけ。
彼女には2人の子供がいる為、仕事が終わっても家事が忙しく、電話する時間がない。
僕等はメールでお互いのコミュニケーションをとっていた。
電話が出来る日は夜遅くまで電話し、仕事の話、人間関係の話、彼女の子供の話、どんな話もした。
15の僕には何から何までが新鮮だった。
日が経つにつれ僕は仕事以外で彼女に会いたい、彼女と一緒にいて彼女に触れたい、キスをしたいという欲望が増してくる。
15歳にもなると欲はドンドン膨張し抑えが効かなくなる時もある。
それまでは、川谷さんの子供達が学校に行っている間にコッソリ彼女の家に遊びに行っていた。
彼女の家は町営の団地の為、細心の注意を払いながら部屋まで向かう僕は、まるでパパラッチを警戒しながらマンションに向かう芸能人の様な気分だった。
一般人で、向かう先は昔ながらの団地だったが、それでもスリルを味わいながら会いに行く事が楽しかった。
彼女の部屋では、彼女の好きな曲を流しながらコーヒーを飲む。
彼女の好きな曲は僕の知らない曲ばかり。
アース&ウインド オブ ファイヤー、ABBA、矢沢永吉、
僕がまだ小さい頃に流行った曲を彼女は懐かしそうに聞いている。
僕はコーヒーに砂糖を2本入れ、ミルクも2つ入れる。
当時の僕はコーヒーは砂糖とミルクを入れないと飲めなかった。
今ではタバコとブラックコーヒーはみんなの僕に対するイメージにすらなっている。
川谷さんの家に遊びに行っても数時間で帰らなければいけない。
僕は次の約束を取り付け、渋々彼女の部屋を出る。
なんだか男女逆転しているみたいだった。
そんな日を数回繰り返したある日、僕は彼女に言った。
『もっと一緒にいたい。 泊まれる日はないの??』
『ムリでしょ~、子供達がいるうちはムリ。』
『冬休みは子供達は友達の家に泊まりに行ったりしないの?』
『あっ、30日辺りは2人共友達の家に泊まりで遊ぶって言ってたけど…』
『じゃあ30日泊まりに行くね!』
『アタシは次の日仕事です。』
『僕も次の日仕事です。』
『本気で言ってるの?』
『もちろん。んじゃあ30日に』
僕は最後まで話を聞かずに彼女の家を出た。
頭の中では、彼女と寝る事でいっぱいだった。
早く自分だけのモノにしたくて、僕だけが許される彼女の全てを見たくて。
30日はあっという間に訪れた。
僕は用意するべき物も準備し、予習も雑誌やDVDでシッカリした。
服はもちろん、パンツまでオシャレな物を選んだ。
外はシンシンと雪が降っている。
僕は少し大人っぽく見える服を身に付け、彼女と会う時にしか付けない香水を吹き、精一杯のオシャレをして彼女の家に向かった。
彼女はいつも通りに僕を部屋に入れ、コーヒーを出してくれた。
彼女の話が頭に入って来ない。耳から耳へ素通りしてる。
僕は完全に頭の中がアレでいっぱいだった。
流れている曲がスローなメロディーになり、部屋も暖かくなってる事もあり、彼女は静かだった。
僕は彼女の横に座り、ぎこちないながらも彼女を軽く抱き締めた。
彼女は、
『ダ~メ。』
と言うが抵抗はしない。
彼女の香水と服に付いてる柔軟剤の匂いに気持ちが高ぶる。
僕は彼女にキスした。
彼女は僕のキスを受け入れた。
今まで経験した事のない感覚に僕は完全にスイッチが入ってしまった。
僕は彼女の服を脱がし、彼女の肌に触れた。
人と肌を重ねる事が心地よいモノだと感じた。
僕の初めての人は彼女だった。
この思い出は生涯忘れないと思う。
僕の初体験の人は僕の後輩の母親なんだから。
『何か飲む?』
『冷たい物が飲みたい。』
僕はスポーツドリンクを飲み干し、ふぅ~っと息をつく。
彼女は下着姿のまま、タバコを吸っている。
僕は彼女と寝た事で自分が男として認められたと満足感に浸る。
けど彼女の顔は嬉しそうでは無かった。
何せ自分の息子と同年代のしかも初めてのコと寝てしまったコトの罪悪感があったのだろう。
『オマエの初めての相手がアタシだなんて~』
彼女は何度かひとり言のように苦笑いを浮かべながらつぶやいていた。
僕は彼女を抱きしめてキスをした。