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異脳探偵のメモリー  作者: 戸山 安佐
ブラッディー・マーダー
20/21

ニルフェイス

遠矢はニルフェイスの犯行声明を知り、自分と警察に対して怒りを覚えていた。

「大丈夫ですか?遠矢さん」

「ああ‥‥あまり気にしないでくれ」

「いやですっ!気になります。友達が悩んでいるなら誰だって手を差し伸べたいと感じます。違いますか?」

「鈴は俺が考えていたよりもずっと頑固だったか‥‥」

鈴は遠矢に指摘されて顔を真っ赤にする。頑固とは女性には合わない言葉だ。

「生徒会としてではなく、一友人の独り言だと思って聞いて欲しい」

「分かりました」

「うん、分かった。こう見えても口は固い方なんだ」

鈴と茜は首を縦に動かす。

「良いの?とーや。私はとーやの気持ちに歯向かうつもりはないけど」

「いいんだ、場合によっては事実を知っておいたほうがこれから有利になる面もある」

「分かったよとーや、もう聞かない」

アリスは遠矢が守秘義務を犯すことを心配したようだ。しかし、遠矢の腹は既に決まっていた。

「それでは独り言を始めるからな――――――――――――」

遠矢は事件の要点を掻い摘んで話した。

まず、この事件こそ二人が担当する初めての魔件であること。

犯人は既に二人の人間を殺めていること。

頭部が無いこと以外で犯行に統一性は無いということ。

遠矢が死体検案書や警視庁からの操作報告から得た情報で気になった点を挙げていった。

「――――――――――という訳だ」

「独り言は終わりましたか?」

「ああ、気が済んだよ」

遠矢は微かな笑みを浮かべて鈴に応えた。

「それで、何でとーやんはそんなに苛ついているのさ。事件が解決していないことが原因なの?」

「確かにそれもあるが、警察が上手く機能していないことと自分の見立てが間違っていたことになんだ」

「‥‥‥うむぅ、とーやが背負う必要ないと思うんだけど。生徒会全体の責任なんだし」

遠矢にとってアリスの励ましは嬉しいものだったが、鬱憤を粉砕するには至らない威力だった。

「ありがとう‥‥‥だけどこれは俺のプライドの問題なんだ。自分の正しさを自分で認知するには常に正解を指していなければならない」

「‥‥‥それに、テロ集団。いや、下劣な犯罪者共は警察組織に挑発して来たんだ。恰も、自分達の殺人が正当化されているような口振りで」

遠矢はささめき続けることで、自分の怒りを分析し落ち着けようとしていた。

ニルフェイスは宣戦布告を仕掛けてきたと考えて良いこの状況。警察は何を考えているのか知らないが、生徒会から報告を受けてなお世間に公表することはなかった。先を越されたのだ。

「遠矢さん?」

「どうしたんだ、鈴?」

「私、遠矢さんの見立て本当によく出来ていたと思います。何様と思うかもしれないですけどそうですね‥‥‥‥探偵みたいです」

鈴のこの指摘はある意味で的を射ていた。


一という特殊な家系に生を受けた遠矢は幼少から魔件絡みで利用され続けてきた。

一つは彼の頭脳を用いた推理である。物心付いた時から、遠矢という少年は人を観察することが好きな少年だった。

その人の性格と行動。あらゆるパーソナルデータをインデックスを付けて脳内に蓄積していった。そして、それ故に人間について深く知りすぎたのである。

人間を知っていることは推理をするときに役立つものではあったが、同時に大人の通常なら隠し通せる嘘も見抜いてしまっていた。大人は汚いと幼心に感じてしまったのである。

彼は知らぬ間に世間一般のプロファイリングとメンタリストとしての資格を有していた。

抱えきれないほどの呪われた能力である。ただでさえ彼にはアンタッチャブルである特殊な能力に囚われているというのに。

父親から渡される事件簿が積み重なっていけばいくほどこの武器は鋭利さを増していった。

白い男が笑った。

『僕には勝てないよ』

解決率100%を更新し続けるその頃の自分はその一番無垢で一番染まりやすい色の男の言葉を気にもしなかった。

しかし数年後、遠矢がこの高校に身を置くことになった元凶にかの男はなるのだ。

現在、遠矢の解決率は99%である。


「探偵か‥‥‥俺はいつも運が良いだけなんだがな。今回もまた判断を誤った。テロリストが犯人像の正体だとは夢にも思わなかった‥‥‥‥‥‥ん?」

遠矢は自分の脳細胞がピクリと動いたような感触を感知した。あの事件までは水を飲まねば死ぬくらいの当たり前のことだったが、最近は音沙汰もなかった。

魔件を避けてきたのが原因だろうか。今はそんなことに推察を加えることよりも今になってこの活動が生じた原因を探そうと遠矢は生徒手帳を取り出す。

会長に頼んで以前、データを転送してもらっておいたのだ。

何が遠矢の琴線に触れたのか、彼自身今は分かっていないのだ。

二人に事件像を話したことで事件像が整理し直されたのだろうか。

「もしかしたら‥‥‥‥俺の考えは一部的に合っていたのか?」

「どーゆうことなの?とーや」

「俺は事件の統一性の無さから、頭部を爆発させることだけをルールとした犯人が複数いる筋書きを実は既に立てていたんだ。でもそれがテロだなんて思っても見なかった。だけれど、一件目の殺害で俺がテロの可能性を思案すらしなかったのには理由がある」

「何ですか?」

遠矢は息を呑み告げる。

「アリスには話したが、生活反応だよ。一件目で犯人は別の方法で被害者を殺害、その後に頭部を爆発させている。犯人が躊躇ったんだとしても、犯人はテロリストなんだろ?その必要がどこにあるんだ?」

「確かに同じ手段を有しているのなら素直に頭部を爆発させればいいですものね」

高校生が話すには物騒な会話だ。

「ことの顛末は分からないが、これがテロリストの典型的なやり方ではないことは確かだ。躊躇したと断定は出来ないが、別の方法で初め殺したのには何か理由がある筈なんだ」

遠矢の脳内に微かな一条の光が差し込む。事件の真相に迫るための。

「二人のおかげで落ち着いたよ、ありがとう‥‥‥」

「いやいや、私何もしてないし」

「話を聞いてくれたことこそが重要なんだ」

茜が照れ臭そうにかぶりを振るので、遠矢が追い討ちをかけると『ううん‥‥‥』と顔を赤くした。

「鈴もありがとうな」

「はいっ!こんなことで良ければいつでもお話を伺いますよ」

遠矢は微笑んで彼女の言葉を返した。

「ねぇ、とーやぁー。私には何か無いの?」

除け者にされたアリスが口を尖らせて不満気にする。

「まだアリスにはやってもらわなければいけないことがあるからな。ここから先は二人の間だけの秘密だ」

「うんうんっ!満足だよ、それで!」

アリスの顔は一変して明るくなった。時にあざとい面も見せるアリスの扱いに遠矢は慣れてきた。

そしてその様子を鈴と茜はやれやれといった様子で眺めている。

「アリス、明日の放課後に会長にミーティングを開いてもらうように頼んでおいてくれないか?俺は少しやらなきゃいけないことがあるんだ」

「それくらいならお安い御用だよっ!」

「じゃあ、頼んだ。ちょっと出かけてくるから‥‥‥10時には戻って来られる筈だから」

遠矢はそれから身支度をして寮の裏口から学園を飛び出した。



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