2-89 世界樹中層
―1―
なぜクィーン・ビーが復活したのか分からない。分かっているのはこちらと敵対しているってことだけだ。ということで、倒すッ!
――《チャージアロー》――
鉄の矢に光が集まっていく。
――《集中》――
貫けッ! 光り輝く矢がクィーン目掛けて飛んでいく。それを防ごうとエリートがクィーンの前に。光の矢がエリートを貫く。更に矢を追いかけるようにミカンさんが駆け抜ける。
――《斬》――
ミカンさんのスキル。手に持った長巻からの強力な一撃がエリートを真っ二つにする。
――[ウォーターボール]――
俺の前に水の球が浮かぶ。行けぇーッ!
水の球がふわりと飛んでいく。俺は水の球が飛んでいったのを確認し、すぐに火の矢を番える。
ミカンさんは生き残ったエリートとソルジャー達の攻撃をひらりひらりと回避し、クィーンへ。しかし、クィーンはそれを待ち構えるように手に持った杖を振りかざしていた。
俺の水の球がエリートに当たり、飛べなくなったエリートが地面へと落ちる。
俺は守るモノが無くなったクィーン目掛けて火の矢を放つ。
ミカンさん目掛けて、クィーンの手に持った杖から光線が伸びる。ミカンさんは素早く長巻から腰に下げた刀に持ち替え、光線を斬り払う。……って、斬り払えるのかよ。
そして、その頃には俺の放った火の矢がクィーンの脳天に刺さっていた。脳天に火の矢が刺さったクィーンの動きが止まる。
――《一閃》――
腰に下げていた刀のためか長巻の時ほどの範囲は無いが、ミカンさんの手から放たれた刃が目の前の蜂達を斬り裂く。
更にミカンさんは素早く刀を鞘に戻す。
――《月光》――
カチンという音の後、ミカンさんがこちらに振り返る。
「終わりだ」
それに合わせてクィーンが斬り裂かれ、散らばっていく。更にどすんという音と共に地面に落ちていたエリートに長巻の先端が突き刺さっていた。その一撃でエリートは絶命したようだった。終わった。うん、楽勝だ。うーん、楽すぎる。俺はソロの方が好きなんだけど、これだけ楽だとパーティを組むのも悪くないなって思っちゃうよなぁ。
見るとミカンさんはすでに魔石の回収を行っていた。こういう行動の早さが冒険者として重要なのかも知れないな。俺も見習わないと。と、と、俺は先に鉄の矢を回収しないとな。
―2―
『ミカン殿、素材は』
「今の私たちでは持てる数にも限りがあるので、放置しか無いのでは?」
えー、勿体ないよー。少しでも売れるのなら集めるべきじゃん。しかし、これで分かったのはミカンさんも大きな魔法の袋は持っていないってことかなー。俺のXLは非常に優秀で便利だけど1個しか入らないのが難点だよなぁ。
――《魔法糸》――
俺は集めた素材を魔法糸で一纏めにする。にしても余り魔法糸を活用しなくなったなぁ。当初はすっごい活用しまくってたよな。この世界でまともに行動できたのもこのスキルがあったからこそだったんだよなぁ。手の代わりに使ったり、移動に使ったり……今ではそれ以上の便利スキルが増えたし、(俺自身が人間に近づきたいって思いから)人間らしく行動するようにしているから、それに合わせてどんどん使う機会が減って――ホント、偶にしか使わなくなったもんなぁ……うん、しみじみ。ま、便利は便利だからここぞって時は使うけどね。
「ラ、ラン殿、これは……」
『帰りに通ることがあれば回収だな』
「う、うむ」
さあ、上を目指すぜ。二人で外周をどんどん登っていく。
『ジャイアントクロウラーは無視だ』
俺の言葉にミカンさんが頷く。下層の上層部には動きが遅く、反応の鈍いジャイアントクロウラーくらいしか居ない為、今の俺たちの動きの速さなら駆け抜け、それらを無視することが出来た。
上へとどんどん駆けていく。セフィロスライムの不意打ちだけは驚異だが、俺が上方に線が無いかを確認している為、不意打ちも未然に防ぐことが可能だ。楽勝、楽勝。
そして、ついに下層の上層最深部へ。目の前には顔代わりの球体が載っかった丸太のような巨人、ウッドゴーレムが居た。うん、こいつも復活しているのか。
さ、戦闘開始だな。
『ミカン殿、その姿から想像出来ない機敏さに注意を』
俺の言葉にミカンさんが頷く。こいつに矢を当て続けるのは厳しいか……。うん、槍だな。ホワイトさん、出番だぜ。俺はサイドアーム・ナラカにホワイトランスを、ちっこい右手に鋼の槍を持つ。さあ、行くぜ。
と、俺が武器を持ち駆け出そうとした瞬間だった。ウッドゴーレムが振るった豪腕にミカンさんが吹っ飛ばされていた。へ? ちょ、え?
しかし、ミカンさんは猫のようにしなやかな動作で空中にて一回転し、目の前に刀を構えたままの姿で綺麗に着地する。あ、ああ、武器で防いでいたのか。良かったー、ホント、びっくりさせる。
「ラン殿、《隼陣》を使います」
えーっと、確かリキャストタイムが長くて効果時間も短いけど敏捷補正が上がるんだったかな。
――《隼陣》――
ミカンさんを中心に光が広がる。俺もその光に包まれ……なんだ、コレ。体が凄く軽い。まるで空でも飛べそうだ。おっし、改めて行くぜッ!
高速で動く芋虫な俺。俺の動きがウッドゴーレムを圧倒する。行ける、行けるッ!
さあ、ホワイトランスの真価を見せる時だ。確か、魔法付与が出来るんだったよな。さあ、槍に魔法を付与して……って、どうやるんだよッ! 仕方ない、いつものようにやるしかないか。
――《集中》――
迫り来る丸太のような右腕。遅い、遅いぜッ! 右、左、ウッドゴーレムが振るう豪腕をくぐり抜け懐へ。喰らえェェッ!
――《Wスパイラルチャージ》――
青く輝く銀のラインが螺旋を描く、それを追うようにもう一つの螺旋が駆け巡る。螺旋がウッドゴーレムを抉り削っていく。そこから逃げるようにすぃーっと後方へ動くウッドゴーレム。逃がすかよッ!
――《百花繚乱》――
ホワイトランスが青く輝く残光だけを残し高速の多段突きを繰り出す。槍が消える度に木片の花びらが舞う。辺りに咲き乱れる木片の花たち。しかし、まだ倒しきれないッ!
こちらの攻撃を無視して手当たり次第に丸太のような腕を振り回す。ち、回避だ。集中力の高まっている俺には高速で振り回される腕もスローモーションでしか無い。《隼陣》の効果でそれらをすいすいと回避する。しかし、攻撃するチャンスが無く、じりじりと後退させられる。
「ラン殿、すまないッ!」
ミカンさんの声。その時には俺の上にミカンさんが居た。え、あ? 踏み台にされた? そして、その瞬間、体が一気に重くなる。うお、さっきまで素早く動けていたのが嘘のようだ。まるで水中に居るみたいだぞ。もしかして《隼陣》の効果が切れたのか?
その瞬間には、空中に居るミカンさんは腰に刺さっている刀の上に手を置いていた。
――《月光》――
ミカンさんがカチンという音と共にウッドゴーレムの前に着地する。そしてこちらへと振り返る。
「終わりだ」
その瞬間、ウッドゴーレムが切り刻まれ、ただの木片と化す。うん、年齢柄かちょっと厨二入っている気がしないでも無いけど格好いいぞ、ミカンさん。
割と楽勝だったなぁ。ソロと段違いだね。
「今日はもう《隼陣》を使用出来ない」
あ、一日一回みたいな感じなのか。しかし、これはこれで便利なスキルだなぁ。
さて、ウッドゴーレムの動力核を回収したら、真の世界樹へと向かいますか。
―3―
「ラン殿、これで世界樹も終わりだな」
いいや、違うんだぜ。
『ミカン殿、部屋の中にある、円の中には入らぬように気をつけてくれ』
俺の言葉にミカンさんは首をかしげ、それでも納得してくれたのか頷く。
さあ、ここからだ。
ウッドゴーレムの守っていた部屋の中に入り、前回と同じように隠し扉の前に。さあ、順番はっと、1、2、3、4っと。順番通りに壁の膨らみを押していく。そして、ふぁんという音ともに『隠し扉』が消えた。
「こ、これは……?」
『ミカン殿、ここからが本当の世界樹の迷宮だ』
俺はミカンさんを連れだって外へ。ああ、陽射しがまぶしいぜ。
広がる世界。
「ここは、世界樹の上か」
上……で、いいのなあ。今回は出来れば、次の中間地点までは行きたいなぁ。この迷宮を作った人間が――迷宮王だったか? が余程意地悪じゃない限りは、もう何個かは中間地点があるでしょ。
次の中間地点まで進めれば、下層の上層を通らなくて良い分、次に迷宮を進む時が楽だしな。
ようこそ、ここからが真の世界樹の迷宮だぜ。
2021年5月5日修正
エリートは絶命っした → エリートは絶命した




