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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
12 むいむいたん
987/999

12-50 戻ってきた先の異変の中で

―1―


 《転移》スキルを発動させ、城の屋上へと着地し……ようとして弾かれた。アレ? 城に直接降りる事って出来ないんだったか? いや、でも、それなら、最初から転移チェックが出来ないはずだよな? ここに飛ぶことが出来るって事は転移チェックをしているってことで――アレ? どうだったかなぁ。以前は、ずっとコンパクトの転送に頼っていたからなぁ。

 城を覆うように何か透明な障壁があり、それによって《転移》スキルの着地を防がれ、今現在、俺たちの体はぼよよーんという感じで弾かれ、空を飛んでいる。

「マスター、このままでは地面に叩きつけられ無残な姿を晒すと思うのです」

 は、へ?


 《転移》スキルって、何か不思議なバリアみたいなもので守られているから、飛ぶ勢いは激しいように見えても安全に着地出来たと思うんだが、も、も、もしかして、さっきのバリアに触れた段階で着地扱いになっているのか?


 あー、このままでは、この勢いで地面に叩きつけられて、俺たちの体がぐちゃぐちゃになっちゃうー。

「ランちゃん、ランちゃん、地面、地面」

 羽猫姿の二夜子が手を振って慌てている。はいはい、分かってる、分かってる。


 地面に触れる寸前に《浮遊》スキルでブレーキをかける。あー、これ、懐かしい感じだな。最初の頃は、《転移》スキルの着地が安全だなんて気付かなくてさ、毎回、毎回、《浮遊》スキルでブレーキをかけていたんだよなぁ。


「ふぅ、死ぬかと思ったよぉ」

 14型にぶら下がった羽猫姿の二夜子が、やけに人間くさい仕草で額の汗を拭っていた。いや、お前、別に額から汗とか流れていないだろ。毛玉だろ。まぁ、元が人間だから、とっさに人間くさい仕草が出るのは仕方ないのか? えーっと、仕方ないのかなぁ。


「マスターなら大丈夫だと信じていたのです」

 14型さん、それ信じていなかったよね。信じていなかったから言っている言葉だよね、それ。

『ほえほえほえ』

 ユエインは目を回して何やらよく分からない言葉を飛ばしているな。


 と言うわけで、だ。


 俺は帰ってきた。


 俺は目の前の城を見上げる。


 俺が作った、皆と作った、国。


 グレイシアに帰還ってな。


 しかし、静かだな。


『人の気配を感じませんね』

 ユエインが獣耳をピクピクと動かしている。


 確かに人の気配が――無い。


 どういうことだ?


 グレイシアは確かにさ、小さな、国とも言えないような、そんな街程度の規模だったけどさ、それでも数万くらいは人が居たはずだよな?

 ツィーディアの港町の方に避難しているのだろうか? あちらもかなりの規模まで発展していたはずだからな。そうだと思いたいなぁ。

 それと城に透明な、目に見えない障壁が張ってあったことも気になるな。何が起きている?


 この城ってさ、元々は魔族が――フミコンが作った氷の嵐に守られた城だったよな?


 フミコン、か。


 色々と考えてしまうな。


 まぁ、それもこの城の中に入れば分かるか。


『この城の中に答えがあるのだろうな』

 と言うわけで城に入るぞ。


 城に入ろうとして14型が動く。そして、その駆け出そうとした姿のまま、何かに弾かれ、思いっきり後方へと吹き飛ばされていた。まっすぐに変な格好で吹っ飛んでいったぞ。どれだけの勢いで城に突っ込んだんだ。というか、だ。だから、この見えない障壁は、何だ? 完全に、全体を覆うように作られているようだな。


 で、だ。


『大丈夫か、14型』

「大丈夫です、マスター」

 恐ろしい勢いで吹き飛んでいた14型が、蘇る死体のように直立の姿勢のまま起き上がった。


 にしても、見えない障壁か。


 どうしたもんだか。


 俺はゆっくりと14型が跳ね飛ばされた障壁の辺りまで近づく。やはり、何も見えないな。


 小さなまん丸な手を伸ばすと、その手が何かに触れた。おー、結構、弾力がある感じだな。

 ぼよーん、ぼよーんっと。


 で、何で、こんな透明な障壁が城を覆っているんだ?


 前の時はどうだった?


 確か、この城が巨大な人型兵器になって巨大な天使像と戦って、その後は、普通に元の位置で城に戻っていたよな? 確かそうだったよな?


 俺は重なった世界の、他の俺の記憶を思い出す。その、どの場合でも、この城が、こんな障壁に覆われたことはなかった。

 これは葉月の仕業か? いや、違うだろうな。


 俺は障壁を叩く。ぼよーん、ぼよーんっとな。これ、中に伝わっているんだろうか? うーむ。まぁ、伝わっているかどうかなんてさ、どうせ、最初の段階でバレているだろうから、気にしただけ無駄か。


 さて、と。


 引き裂きますかぁ。


 この障壁が何であろうと、この世界が魔素で作られている限り、全て無駄だ。


 あの時の葉月も――俺を、こんな風に見ていたのかな。見ていたんだろうなぁ。ステータスプレート(螺旋)の数値がおかしくなったことで世界を乗り越えたつもりになって、色々な武具を作って、ああ、そうだよな。こんなことが出来るなら、全て無駄だよな。


 手を伸ばし、透明な障壁を魔素へと変えていく。


 透明な障壁を魔素に変換し、穴を開けていく。


 さあ、通り抜けるか。


『今、この空間に穴を開けた。抜けるぞ』

 さあ、城の中で何が待っているかな。

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