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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
12 むいむいたん
982/999

12-45 再び、最後の八大迷宮へと

―1―


 迷宮が――八大迷宮『二重螺旋』が崩壊を始める。


 ……。


 崩壊を始めているよな?


 今、俺たちが居るのはエレベーターの上だからな。いまいち、分からないというか……。


 足元の振動は激しくなっていく。って、こ、これは大丈夫か?


 周囲の振動は――足元の振動は大きくなるが何も起こらない。

「ランちゃん!」

 二夜子が叫ぶ。


 前回はどうだった?


 確か、足元の振動がゆっくりになって、動きが止まって、そして、頭上に扉がせり出すように生まれて――何故、何も起こらない? まさか迷宮の崩壊が始まったことで、それらが起動しなくなったのか?


 どうする、どうする!?


『あちらの空間に違和感の音がしますね』

 ユエインが薄暗い闇に覆われた頭上を指さす。あー、狐ハンドだと、指さしも出来るんだ。器用だなぁ。そういうのってさ、俺には難しい芸当だからなぁ。

「となれば、うちの出番やね」

 二夜子がその姿を大きな羽の生えた猫へと変えていく。おいおい、そんな、急に大きくなったら、この動く足場から押し出されるじゃないか。


「はやく、うちの背中に乗って」

 狐姿のユエインと俺は、巨大な羽猫姿の二夜子の背に飛び乗る。


 しかし、14型が動かない。

『14型、早く乗れ』

 しかし、14型は動かない。


 どうしたんだ? ショートでもしたのか?


「14型ちゃん、早く」

 14型は口をへの字にしたまま動かない。


『14型、時間が無い。どうしたのだ?』

 俺の言葉に、やっと14型が動く。ゆっくりと優雅にお辞儀をする。そして、くるりと空へと舞い上がり、羽猫姿の二夜子の背に飛び乗った。14型は、そのまま、のしのしと、そして、あくまで優雅ぽく、二夜子の頭の方へと歩いて行く。そして、その耳元で何かをささやいていた。それを聞いた二夜子がニシシと笑っている。


「すぐに返してもらうと思うんよね」

 そして、二夜子が飛び立つ。


 飛び立った瞬間、何か重しでも乗せたかのように、一瞬だけ、二夜子の体が沈む。しかし、すぐに浮き上がる。

『二夜子、あちらですね』

「らあじゃぁぁー!」

 二夜子が気合いの叫びを上げ、飛ぶ。


 俺たちはバリアに守られているから分からないけれど、結構、負荷がかかっているのか?


 二夜子が気合いを入れて飛ぶ。


「14型ちゃん、上」

 二夜子の言葉に14型が頷く。

「この程度では返したうちに入らないのですが、構わないのです」

 14型が恐ろしい勢いで飛び上がり、頭上の暗闇に世界の壁槍を突き立てる。何度も、何度も、何度も、突く。

 そして、世界の壁槍を持ち替え、空いた手で、天井を、暗闇を殴りつける。


 ぽろぽろと暗闇が崩れ落ちる。そして、崩れ落ちた闇の先に苔むした洞窟が――その陽光が見える。


「突っ込むよー」

 羽猫が――二夜子が光へと、闇の中から生まれた苔むした洞窟へと突っ込む。


 光の先、苔むした洞窟には、いつもの、見覚えのある台座があった。ここはスキルモノリスが置かれている、いつもの最奥か。


「もう限界」

 二夜子が小さな羽猫の姿へと戻る。それを14型が掴まえていた。

「マスター、ここも迷宮の一部のようです。急ぎ脱出を」

 14型が、一瞬、ぼうっとしていた俺を持ち上げ、ユエインも持ち上げる。そして、駆け出す。そうか、ここも迷宮か。この洞窟が崩れると、島に渡るのは難しくなりそうだな。いや、その方がいいのか。あの島は、あのまま、静かに眠らせた方が、その方が……。


「空間を歪めていたのか、つながりが無茶苦茶だったみたいやね」

 14型に無残な姿で運ばれている二夜子が、そんなことを言っていた。空間を歪める、か。確かに、『二重螺旋』はあり得ないような繋がり方をしていたな。しかしまぁ、空間を歪めるなんてさ、もう何でもありだよな。


 14型が塩水の流れる通路を駆け、駆け抜け、苔むした洞窟を脱出する。

「マスター、外です」

 そうだな。


 俺たちの脱出にあわせ、洞窟が崩れ落ちていく。残ったのは岩礁の見える小島だけだ。


 さて、と。


 次は最後の八大迷宮『名を封じられし霊峰』か。


『二夜子』

 俺は、だらしなくぶらーんとした姿をさらしている二夜子に呼びかける。

「どうしたのかにゃー」

 わざとらしく猫みたいな語尾をつけるな、あざとい。じゃなくて、だな。


『これからナハン大森林に飛ぶ予定だが、フウキョウの里に寄るか?』

「パスで」

 二夜子の答えは早かった。

『いや、お前は、あの里で守護星獣として……』

「パスで」

『いいのか?』

「今更、うちがどの面下げて行くってんだって話やねー」

『しかし、な』

「いいんよ」

『あの里の者達なら、お前を慕っていた……』

「分かってるんよね。分かってるからこそ、まだ行けないんよねー」

 二夜子は照れたように前足で顔を洗っている。14型に捕まえられてぶらーんとした姿だと、何というか、アレだな、守護星獣だったころの威厳とかそういうものは全然無いな。


「だから、行くのは、ミカンちゃんを助けて、全てが終わってからやね」

 二夜子がニシシと笑う。


 そうか、そうだな、そうだよな。


『分かった。では、改めてナハン大森林へと飛ぶ』

 俺の言葉に二夜子、14型、ユエインが頷く。


 では、行きますかッ!

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