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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
12 むいむいたん

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981/999

12-44 八大迷宮『二重螺旋』

―1―


 大きく透明なカプセルが並ぶ実験施設を進む。

『これは、余り見ていて楽しいものではないですね』

「そうやね」

 こんな実験施設の跡地なんてさ、この世界の裏側というか、確かに見ていて楽しいものではないよな。


 先に進もう。


 透明なカプセルが並ぶ通路を抜け、次の部屋へと進む。さらに小部屋を抜けると、余り広くない部屋に出た。周囲は石壁という、いかにも迷宮といった作りになっている。


 俺の正面には扉が二つ。右と左。そして、その扉と扉の間に、女性の顔を持ち、猫の胴体、鳥の羽を持った石像が置かれていた。まるでスフィンクスだな。


 そして、スフィンクスの相変わらずよく分からない質問。


 えーっと、前回はどうしたんだったかな。


 フミコンに連絡して、その指示に従って、右、右、右、右、右、左、右、左、右、だったかな? 確か、そんな感じだったような。俺は記憶力はそれなりに良いからなッ!


 前回と同じように進む。


 道は終わらない。


「ランちゃん、これ……」

 二夜子が口を開く。


 言うな、言うな、言うんじゃない。

『同じ場所をくるくると回っている感じですね』

 あ、はい。


 もしかして、俺の記憶が間違っていたのか? 順番が違っていたのか?


 ……。


 うーむ、どうしようかな。

「ランちゃん、もう一度行ってみよう」

 二夜子の言葉で、もう一週することになった。


「なるほど、そういうことやね」

『ですね』

 二夜子とユエインが頷きあっている。14型は無言だ。何か分かったのか?


 二人の言葉に従って、扉を選んでいく。


 そして、俺たちは巨大な両開きの扉がある部屋に辿り着いた。

『結局、何が答えだったのだ?』

 俺の言葉を聞いた二夜子は、もったいぶって、ニシシと笑っている。ホント、小憎たらしいヤツだな。

『問題自体に意味は無くてですね……』

「あー、ユエイン、言ったら駄目なんよー」

 二夜子、こいつは……!


 もったいぶっている二夜子とため息をついているユエインの前に14型は無言で立っている。

『で、答えは?』

 ほら、14型さんも聞きたがってるから早く答えるのだ。

『最初の、出だしの言葉で、右と左に別れているみたいですね』

 えーっと、つまり?


 あー、なるほど。


 本当に問題には意味が無かったのか。あー、やっと俺も理解した。そういうことだったのか。だから、あの時、問題を全て聞かず、出だしだけで右と左を言い当てていたのか。


 言われてみれば、そんなことだったのかって内容だけどさ。気付かないよなぁ。


 ……。


『先に進むぞ』

 そう、答えも分かってすっきりしたことだし、先に進もう。


 ……。


 何だろう、14型の俺を見る目が優しい気がする。いや、無表情なのに。いやいや、俺は――俺だって、時間をかければ分かったはずだからな? な?


『さ、先に進むぞ』

「了解です、マスター」

 14型が俺の方を見たまま、両開きの扉を押し開ける。むむむ。言いたいことがあれば、言うのだ14型よ。




―2―


 扉の先は真っ暗闇だった。


 俺たちが暗闇の中を進むと、突然、ガタンという何かが外れたかのような音が響き渡った。


 そして、警報が鳴り響く。


 俺たちの足元が、床が振動している。


 部屋に光が灯る。俺たちの足元から、上へ、俺たちを追い越していくように次々と灯った光が通り過ぎていく。ガイド灯か?

「エレベーター?」

『物資搬入用を想像させますね』

 採掘現場とかにありそうな剥き出しのエレベーターみたいな感じだよなぁ。


 何もない空間に俺たちが乗っている板が浮いている。


 そして、俺たちの目の前に――空中に四角い箱が現れた。現れたな。


 一つだけだった四角い金属の箱から、新しい金属の箱が生まれていく。箱が分裂するように生まれ、螺旋を描きながら連なっていく。箱から箱が生まれたわけではなく、縦に長く、一個にしか見えないように重なっていたのか?


 次々と同じサイズの四角い箱が連なり、まるで蛇のようだ。


 長く伸びた無数の四角い箱が動き、形を変えていく。


 それは漢字の不と縦棒がくっついたような姿だった。

『梵字みたいですね』

 知っているのかユエイン?


 梵字って、梵字ってさ。そう言えば、円緋のおっさんって坊さんみたいだったもんな。そのつながりだろうか。


 そして、四角い金属の箱の正面が開いた。


 金属のはこの中にはまん丸な球体が埋まっている。無数の金属の箱の中央一つだけが橙色で、後の箱は全て黒色だった。


 そして、俺は、その橙色の球体目掛けて、すでに準備していた世界樹の弓に番えていた矢を放つ。

 レーザーのように、ほぼ、まっすぐに飛んだ矢は、橙色の球体を貫き、爆発させる。橙色の入った四角い箱が空中を転がり落ちていく。

 抜け落ちた箱の部分を埋めるように隣の箱が動く。そして、再度連結する。


 金属の箱の一つの黒い球体が裏返り、橙色に変わる。そして、それを待ち構えていた俺は、次の矢を放つ。

 相手に攻撃はさせない。


 放つ、放つ、放つ。


 次々と金属の箱を壊し、残る一つとなる。


 最後に残った四角い金属の箱がこちらへと迫ってくる。そして、その巨大な箱が、こちらの足場と連結する。

 中の球体が、丸まっていた人型が、起き上がる。


 さあ、待っていたぜ。


 速攻で、たお……。


 しかし、俺の攻撃よりも早く、丸まったゴーレムが発光する。ちッ、そちらの方が早いかッ!


 ゴーレムから光線が放たれる。しかし、その光線は途中で止まっていた。見れば、俺の腕輪が光っている。そうか、この腕輪、もしかすると、魔法無効、スキル無効なのか? 多分、そうなんだろうな。


 腕輪の光が消える。効果は一瞬だけか。まぁ、その一瞬を稼いでくれただけで充分なんだけどな。

 俺は《永続飛翔》スキルで飛ぶ。


 下から上に、竜泉の大剣で丸まったゴーレムを打ち上げる。そして、俺は浮き上がったゴーレムに真紅妃を――無限の螺旋を解き放つ。コアを穿たれ、風穴を開けたゴーレムが、その姿を光へと変えていく。


 俺は手を天へと伸ばし、周囲へと散らばった魔素を集める。ゴーレムを形作っていた魔素を集めていく。


『円緋、聞こえるか?』

 円緋のおっさん、久しぶりだな。


 俺の言葉に答えるように、集めた魔素がほのかに青く光る何かへと姿を変えていく。

『この姿、それに、その声、それがしは』

 青い光が明滅し、やがて人の形を――青く透明な人の形を作っていく。

『今、解放する』

 俺の姿を見た青い影が大きく笑う。懐かしい笑い方で、俺に笑いかける。


『それがしもセンパイに助けられたか!』

 ああ、そうだよ。こんな形でしか助けられなくて――すまない。

『その様子だと、まだ戦いは終わっておらぬか』

 円緋のおっさんの笑い声とともに、俺の背に袈裟のような巻き付く形のマントが生まれる。

『これは……?』

『それがしの思いが少しでも力になれば、と』

 ありがとう、円緋のおっさん。


 青い影が薄れていく。

『センパイ、気にするな。後悔せぬように、お主はお主の道を突き進むのだ』

 その言葉とともに青い影は消えた。ああ、そうだな。


 あんたまで俺を先輩呼びしていたけどさ、あんたの方が、俺よりよっぽど人生の先輩だったよ。


 ありがとう。


 あんたが俺たちの後ろを守ってくれて、凄く心強かったよ。


 あんたの意思、確かに受け継いだからなッ!

2021年5月9日修正

すきっりしたことだし → すっきりしたことだし

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