2-88 世界樹下層
―1―
さあ、やって来ました世界樹の迷宮。世界樹の迷宮も懐かしいよなぁ。って、何だか、こんなことを前にもやったような……。
と、とりあえずは転送装置へっと。
「ラン殿、どちらへ」
あー、やはり普通の冒険者は転送装置のことを知らないのか。
『こちらだ』
さて、転送装置に案内するのはよいけど、ミカンさんも転送出来るのかなぁ。
ミカンさんを案内してやって来ました世界樹の転送装置。
「ここは……」
まずはミカンさん単独で使えるかを試して貰おうかなー。
『その台座に触れてみて貰えるか?』
危険は無いよー、無いよー。俺個人で何度も使っているよー。
「ふむ。この台座だな」
しかし、何も起こらなかった。うーん、何が原因だろう。考えられるのは3通り。俺が特別だ、っていうパターンと元の場所で触れてないからってパターンと、それ以外の俺が思いつかないコトが原因ってパターンか。
「そういえば世界樹の迷宮内にも、このような台座があったが」
そうそう、そうなんだよな。
『ちなみにその台座に触れてみたことはあるか?』
ミカンさんは腕を組み考える。
「うむ。怪しいと思い調べてみたことなら」
うーん。何でだ。ここは俺が特別だから説を推したい。
次は一緒に転送出来るかの確認だな。
『ミカン殿、この下に描かれた円の中から出ぬように』
「う、うむ。分かった」
さーって、どうなるかな。俺が台座に触れると映像が浮かび上がった。あ、そうだ。まさか、この映像が見えていないってことは……無いよな? 思いついたことは聞いておくか、俺はこういうトコが抜けているしな。
『ちなみにこの台座の映像なのだが』
「映像……?」
ミカンさんは首をかしげる。うお、思い付きで聞いてみたけど当たりかよ……。こういう微妙なトコだけは当たるなぁ。この映像が見えていないから転送出来ないってコトなのか? ……まぁ、その原因が分かったところでどうにかなるワケじゃ無いけどさ。
んじゃまぁ、転送してみますか。行くのはもちろん下層の上層だな。
俺は下層の上層前の映像を選ぶ。
―2―
無事、下層の上層へ。無事って話もおかしいよな。まるで事故が起こるみたいじゃないか……って、フラグを立てるのは止めよう。にしても、これホントどういう原理か分からないよなぁ。
俺の近くには猫目を大きく見開いたミカンさんが、しっかりと居た。
「こ、これは……。もしかして中層!?」
そそ、下層の上層前だね。
いやぁ、でもちゃんとミカンさんも一緒に転送出来て良かったよ。これが無理なら俺はソロ確定だった!? ……もしかするとパーティを組んでいないと駄目なのかも知れないけどね。
『ああ、では進もうか』
目の前には大きな上り坂。この先にはクィーンが居るかも知れないんだよなぁ。
「ラン殿」
俺がのしのしと坂を登っていると、ミカンさんが声をかけてきた。俺は頷きコンポジットボウを構える。
わらわらと現れるソルジャー・ビーとキャリア・ビー。俺はちゃんと線が見えているから分かったけど、ミカンさんは何で気付いたんだ。気配とか読める系なのか。
ミカンさんは、コンポジットボウを構えた俺を見て、一度こくんと頷き駆け出す。
――《集中》――
早弓スキルによって次々と鉄の矢を撃ち出す。さすがに今回は勿体ないから残っている最後の爆裂の矢は使わない。
集中スキルのお陰か、蜂達に回避されることも無く次々と鉄の矢が刺さっていく。
――《一閃》――
長巻を片手に駆けだしたミカンさんも蜂を斬り裂いていく。あ、コレ、楽勝モードだはー。
ミカンさんの右方から迫ってくるソルジャー・ビーに矢を浴びせる。矢が当たり動きが止まったところをミカンさんが斬る。うーん、楽だなぁ。後衛ってもっと全体を見回して状況を判断して指示を出したり、フォローしたり、と忙しいモノなんだがなぁ。今までソロで頑張ってきた相手と組むと(独りでもなんとかなるから)そこまで頑張らなくても、そこそこのフォローで大丈夫だから楽だよなぁ。
やべ、後衛って俺の天職じゃね? 俺様の為に頑張れーみたいな。とまぁ、さすがに俺も遊んでいるわけじゃ無いけどね。
何も考えずに放ち続けた結果、鉄の矢は残り8本になっていた。あー、そういえばホワイトさんのトコで鉄の矢を買うのを忘れていたなぁ。今なら持ち金も多いし、属性矢を増やすのも有りかなぁ。世界樹ってコトで火の矢ばかり買っていたけど、いざって時に他の属性矢が必要になることも無いとは言えないしね。
周囲の蜂共を片付けたミカンさんが奥からわらわらと現れる蜂を追って更に坂の先へ。と、俺も急いで追いかけないと。矢の残り本数が少ないから、本当は回収してから進みたいんだけどなぁ。しかし、まだ戦闘は継続中だからな。仕方ない、回収はその後だな。
そして坂を登た先、開けた広間には巣を守る2匹のエリート・ビーと杖を持ったクィーン・ビーが居た。復活している……のか?
ええーい、今は考える時じゃない、倒す時だ。