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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
12 むいむいたん
978/999

12-41 記憶の残滓と、そのありか

―1―


 迷宮が――八大迷宮『二つの塔』が崩壊を始める。俺が楔となっていた巴を解放したから、か。


『14型、急いで脱出するぞ』

「了解です、マスター」

 14型が片手で俺を持ち上げ、抱え、その手でユエインを掴む。二夜子は――二夜子が飛び上がり、俺の頭の上に乗ろうとする。しかし、そんな二夜子を、14型が残った手でガードする。いや、そんなことをやっている場合じゃないよな?

 14型の鉄壁の守りが二夜子を防ぐ。そのうち、俺の頭の上を諦めた二夜子は、14型の肩に乗っていた。最初から、そうしよう、な。


「行きます」

 14型が駆け出す。


 崩壊をはじめ、崩れ落ちていく通路を駆け上がっていく。崩れた場所から、砂が入り込み、進路を塞いでいく。

 14型が道を塞いでいた砂の壁を殴り、爆散させ、その向こうへと駆けていく。


「14型ちゃん、凄いねー」

『確かに凄いですね』

 二夜子とユエインはのんきなものだ。まったく、この二人は……。たく、俺が落ち込んでいる場合じゃないな。


『次に向かうのは八大迷宮『二重螺旋』だ』

「あー、アレやね」

 二夜子が、暴力的な前進を続けている14型の肩から顔を覗かせて、うんうんと頷いている。知っているのか、二夜子。もしやとは思っていたけどさ、二夜子にはエミリオの時の記憶があるってことか?


「今回も飛んでいくの? アレ、疲れるからやりたくないんよねー」

 途中、ちっちゃな羽猫に戻っていたもんな。

『前回の記憶があるのか?』

「エミリオの記憶も持っている、が正解やね」

『私は記憶が混濁しているのに、さすがは二夜子ですね』

 別だけど同一、同一だけど別って感じか。二夜子からしたら、エミリオも二夜子なんだろうけどさ、俺からすると、あのときのエミリオはもういないってことだから、少し寂しいな。


『話を戻すが、まずは近くの島まで《転移》スキルで飛ぶ。そこから地下道を通って八大迷宮『二重螺旋』がある島の方へと渡る予定だ』

「次は結界を壊せるか分からないし、それが正解やね」

 前回は無理矢理、結界を引き裂いて島に上陸したからなぁ。次も上手くいくかどうか分からないし、確実な方法があるなら、そちらを優先すべきだな。


 14型は崩れ落ちる迷宮を器用に駆け上がっていく。俺と二夜子が会話している間も脱出のために塔を駆け上がっていく。


「もうすぐ出口です」

 14型が梯子のついた壁を蹴り、飛び上がっていく。梯子、使わないんですね。まぁ、俺とユエインがいるから、片方の手しか空いてないもんな。片手で梯子を上がる方が大変か。


 崩れ、揺れる中、14型が器用に塔を蹴り上がっていく。


 そして、ぶよぶよの肉の塊があった部屋へと戻り、そこを抜ける。


 そこで駆けていた14型が急ブレーキをかけた。む?


 その14型の目の前に大きなはさみがあった。


 黒光りする甲殻に覆われた巨大なクワガタのような虫。それが俺たちの目の前に立ち、進路を塞いでいる。

「倒さないと脱出出来ないみたいやね」

「問題ないのです。倒します」

 14型が大きく後方へと飛び、俺とユエインを降ろす。


 もしかして、あの肉片にくっついていた幼虫の親玉か!?


 巨大なクワガタが、その顎をならし、ハサミを動かしながら迫る。さすがに、このハサミに挟まれてしまったら、いかに14型といえど無事では済まなさそうだ。


 14型がハサミを紙一重で躱しながら、一歩、また一歩と後退する。


 14型がタイミングを計り、巨大クワガタが大きくハサミを開いたタイミングで前進する。しかし、その14型を待っていたかのように、巨大なクワガタの口から、その中から、無数の棘がついた舌のような器官が飛び出す。14型は前進を止め、横へ躱す。そして、それを狙っていたかのようにハサミが閉じられる。

「邪魔です」

 14型が世界の壁槍をくるりとまわす。


 横向きになった世界の壁槍がハサミの刃と刃のつっかえ棒になる。世界の壁槍によって挟み込むことが出来ず、ハサミが開いたままになる。


 そして、懐に入り込んだ14型が、その顎の下から上へ拳を叩きつける。巨大クワガタの頭がベコリと凹み、上に飛んだ。


 14型が世界の壁槍を掴み、それを軸にしてくるりと飛び上がる。世界の壁槍が抜け、巨大クワガタの残ったハサミ部分が閉じられる。


 ぐちゃあと嫌な液体を飛び散らせながら、巨大なクワガタの胴体がビクビクと痙攣している。


「お待たせしたのです」

 14型は俺たちの方へ戻り、俺とユエインを持ち上げる。

「14型ちゃんは凄いんやねー」

「あの程度、マスターの力を借りるまでもないから私が動いているだけなのです」

 ん? んん? ま、まぁ、俺でも普通に勝てると思うけどさ。14型がやってくれると早くて楽で済むから、うむ。

『助かる』

「マスター、不要です。これが私の仕事なのです」

 露払いはメイドの仕事じゃないと思うけどなぁ。まぁ、ありがとう。


 そして、塔を抜ける。


 14型が出窓のような出口から大きく飛び、砂の上に着地する。


 八大迷宮『二つの塔』は崩れ、崩壊し、流砂に飲まれ、その姿を消した。


 これで6つ。


 残りは2つ。


 八大迷宮『二重螺旋』と八大迷宮『名を封じられし霊峰』か。


 《転移》スキルを使い、俺たちは飛ぶ。


 空高くへと舞い上がり、そして、海を越え、洞窟のある小さな島へと降り立つ。


 さあ、島へ着いたぞ。


 ここは八大迷宮『二重螺旋』の裏口になっていたはずだが、さすがに今は、そちらから侵入することは無理だろうな。魔素の分解を続ければ、俺だけなら、何とかなるかもしれないが、危険だからな。


 普通に表口から入るべきだ。


 さあて、行きますか。

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