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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
12 むいむいたん
977/999

12-40 八大迷宮『二つの塔』

―1―


 龍を倒したことで新しく出来た通路の先にある下り階段を進む。にしても、さっきの14型だけどさ、スキル禁止のエリアのはずなのに、光る拳で殴りつけたりとか、何もない空中を飛び跳ねたりとか、いかにもスキルぽい事をしていたが、気にしたら駄目なんだろうか。駄目なんだろうなぁ。14型だもんなぁ。


 魔法的な力だった、そう考えよう。


 いや、それ以前に魔法的とかスキル的とか、今になって考えればさ、どちらも元は同じものとしか考えられないのに、それが使える使えないって分かれるのは不思議な感じだよな。魔素を源とした同じ力――だよな?


 階段を降りた先の部屋では14型が待っていた。そして、その部屋の奥には白いローブを着込んだ骸骨が浮かんでいる。


「マスター、お待ちしていたのです」

 あ、はい。

「ただいまやねー」

 頭の上の二夜子が挨拶を返している。


 14型が素早く動き、俺の背後へと回り込む。そして、頭の上に乗っていたユエインと二夜子を持ち上げる。

「にゃ、にゃ、にゃ、にゃんとー」

「許可した覚えはないのです」

 いや、君ら、遊んでいる場合じゃないからな。


 部屋の奥で控えている、白いローブを着込んだ骸骨は動かない。こちらが近寄るのを待ってくれているようだ。


「マスター、情報を検索します」

 俺の頭の上に戻ろうとする二夜子を引きずり下ろしながら14型が語る。


「元々は、今までの世界では存在しなかった、魔法という新しい力、スキルという新しい力を、実験、確認するための施設だったようです。そこから体系立て、名前付け、階級付けを行っていたようです。ただ、かなり無理をしていたようで、その実験に耐えきれず異形化したものも多く、その場で液化処置をされていたようです。ここは、その残骸です」

 そんな実験施設を八大迷宮として再利用したって訳か。いや、でもさ、これ、14型の説明が正しいなら、魔法や特技は葉月が作ったものじゃないってことになるんじゃないか? 俺はてっきり、あいつがゲームを参考にして作り出したものだと思っていたんだけどさ、うーむ。


 いや、先入観は駄目だな。葉月が作った魔法やスキルなんてものを、残った世界の人々が知って、それで作った施設かもしれないしさ。順番がさ、どっちが先か分からないんだから、うん、思い込むのは駄目だな。


『二夜子、ユエイン、ここで待っていてくれ。俺は巴を解放してくる』

 14型と遊んでいた二夜子が頷き、階段の近くで丸くなる。ユエインも、その横で、ゆっくりと頷いていた。

『14型、行くぞ』

 一瞬で終わらせる。苦しませない。


 俺と14型が駆ける。


 白いローブに包まれた骸骨が、そのローブの中から大幣を取り出し、振るう。それを見た俺は、とっさに《魔法糸》を飛ばし、回避する。相変わらず、俺狙いか。俺を恨んでいるから――何だろうなぁ。


 と、そこで14型の方で小さな爆発が起きていた。14型が腕を交差し、爆発を防いでいる。14型の周りでは、その動きを封じるように数枚の長方形のカードが舞っていた。触れると爆発するカードか。


 次の瞬間、骸骨の後ろにある左側の水晶が光った。ちっ、まさか。


 俺はとっさに周囲の魔素を操作し、障壁を作る。スキル封じかッ!


 とっさに障壁を作ったからスキルは封じられていないが、障壁から出ることが出来ないため、その場から動けない。


 骸骨が大幣を振るう。


 俺の頭上に白い稲妻が――俺は、とっさに竜泉の大剣をかざす。その竜泉の大剣へと白い稲妻が落ちる。竜泉の大剣の刃に白い稲妻の力が蓄えられたように放電している。おー、とっさの判断だけど、上手くいったな。


 俺は竜泉の大剣を振るう。


 蓄えた力が骸骨へと放たれる。骸骨は、その力を受け、霧散し、そして、すぐに新しい姿で現れた。

『14型!』

「了解です。マスター、計算は終わったのです」

 俺の言葉に答えるように14型が動く。


 14型が、その周囲を舞っていたカードの一つを指で弾く。すると、そのカードが爆発し、そして連鎖し次々と周囲のカードが爆発した。14型は、腕を交差して、その爆発の中から飛び出る。えーっと、こちらからだと力業で全部、爆発させたようにしか見えなかったけど、14型の計算だと、何か上手く、爆発させた感じなんだろうか?


 14型が駆ける。


 駆け抜ける。


 白いローブに包まれた骸骨の横を抜け、その後ろの水晶へ。まずは左側の水晶へ世界の壁槍を突き刺し、それを破壊する。それにあわせてスキル封じの効果が消える。


 14型は、すぐに右の水晶を砕くために動く。が、それを防ごうと骸骨が、障壁を張る。


 俺は《永続飛翔》スキルを使い、飛ぶ。14型の相手をしている白い骸骨の後ろを抜け、右の水晶へ。


 これで終わりだ。


 俺は右の水晶へ竜泉の大剣を叩きつける。


 右の水晶にヒビが入り、そして砕けた。


 白いローブを纏った骸骨が首筋をかきむしるように手を伸ばし、震える。俺は、そんな骸骨へと近寄る。


 そして、手を伸ばす。


 辛かったよな、苦しかったよな。


 巴は女の子なのにさ、こんな姿にされてさ。


 今、解放するからな。


 俺は霧散していく光を集める。


 青い光が明滅し、やがて人の形を――青く透明な人の形を作っていく。


『巴、待たせた』

 俺の言葉に反応するように、青く透明な人型が動く。青い影が、驚くように、自身の体を、その姿を見る。そして、俺を見た。

『遅いですよ』

 ああ、すまない。


『俺を恨んでいるのか?』

 俺の言葉に青い影が頷く。

『恨んでいます。とっても恨んでいます。生きて帰るって約束だったじゃないですか』

 あー、そう言えば、そんな約束をした覚えが……。


『すまない』

 俺には謝ることしか出来ない。


『特別に許します』

 青い影がゆらぐ。


 そして、俺の小さな両の腕に腕輪が生まれていた。


『戦いは終わってないんですよね? 私が出来……出来る、さ、最後の贈り物です!』

 青い影が弱々しくゆらぐ。

『助かる』

『今度は壊さないでくださいね』

『壊さないさ』

 あのときの小手は壊してしまったけれど、今度は壊さないさ。


『私も、私も……』

 青い影が首を横に振る。

『二夜子さん、ユエインさん、後を頼みます』

 青い影が微笑む。


 そして、消えた。


 消えた。


 巫女服のコスプレをしていて、いつも俺に突っかかってきていた少女は、もういない。俺が、その囚われていた魂を解放した。


 後には何もない。


 何もない。


 巴の魂を、葉月に囚われていた巴の魂を、心を解放した。


「ランちゃん……」

 俺の横にはいつの間にか小さな羽猫姿の二夜子が居た。ああ、分かっているさ。

『二夜子、もうすぐ迷宮が崩壊するからな。急いで脱出するぞ』

2021年5月7日修正

使えないって別れる → 使えないって分かれる

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