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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
12 むいむいたん
976/999

12-39 八大迷宮『二つの塔』

―1―


 俺の言葉に答えるように真紅妃と黄金妃が白い巨人へと駆けていく。この二人なら、任せても大丈夫だろう。俺は俺でもう一体を相手にしないとな。にしても、もう片方の塔とはいえ、前回は14型が瞬殺していたもんなぁ。この白い巨人、こんな強敵だとは思わなかったよ。


 俺はもう一体の巨人に狙いを定める。武器は――真紅妃と黄金妃を解放しているから、使うなら世界樹の弓だな。


 うん、あんな、二夜子を瞬殺するような相手に近寄りたくないから、ちょうど良いな。


 矢を精製し、世界樹の弓につがえ、放つ。


 こちらへと迫っていた白い巨人の体に矢が刺さる。白い巨人に小さな凹みがつき、その足が止まる。


 俺は次の矢を作成し、世界樹の弓につがえ、放つ。


 先ほどの攻撃から回復したのか動き始めていた白い巨人の体に矢が刺さる。白い巨人の体に小さな凹みがつき、その動きが止まる。


 俺は次の矢を作成し、世界樹の弓につがえ、放つ。


 動き始めていた白い巨人の体に矢が刺さる。


 ……。


 矢を作成、放つ。巨人の動きが止まる。巨人が動き出す。矢を作成、放つ。巨人の動きが止まる。


 ……。


 これは、アレだ。


 足止めにしかなっていないッ!


 弓自体の威力が弱いとは思わない。これは、矢が不味いんだろうな。周囲の魔素を精製して矢を作っているから、その作業が必要な分、一手遅れるし、周囲の魔素の属性は光、そして相手も光の属性。相性が悪すぎる。普通の矢なら問題が無かったんだろうな。荷物になるからと、矢を持たなかったのが悪かったか。


 それでも俺は矢を作成し、放ち続ける。


 馬鹿の一つ覚えのように放ち続ける。


 放つ、放つ、放つ。


 そして、矢を放ち続け、足止めしていた、その白い巨人の首が飛んだ。


 ぽーんと飛んだ。


 いつの間にか、白い巨人の背後に黄金妃が回り込み、その首を飛ばしていた。もう一体の巨人を倒し終わったので、こちらのフォローに回ってくれたようだ。

 倒れ込み動かなくなっている白い巨人の上で蜘蛛姿の真紅妃が足を乗せ、腕を組んでいる。おー、さすが。


『すごいですね』

「すごいんやねー」

 二夜子とユエインの言葉が聞こえたわけではないだろうが、二人は得意気だ。武具としても凄いけどさ、単体での戦闘力もかなりのものだからなぁ。


 真紅妃と黄金妃はそれぞれ、白い巨人から魔石を喰らい、そして、元の姿へと戻った。


 ありがとう、助かったぜ。


 というわけで先に進むか。


 重そうな金属の扉を頑張ってこじ開け、その中へと滑り込む。むむむ、力仕事担当がいないのは不便だなぁ。


 重そうな金属の扉を抜けた先は、休憩が出来そうな広間になっていた。すでに開けられている宝箱が二つと、この迷宮の主が描かれた扉。


 さて、と。この先は14型とタイミングを合わせて中に入りたいところだが、向こうはどうだろうな。

「ランちゃん、タイミングは問題ない感じやね」

 あ、はい。二夜子は、何らかの手段で14型と連絡を取り合っているのだろうか。しかし、よく、この扉から先はタイミングが重要だって知っていたな。その辺も14型と話し合って、タイミングを示し合っていたのだろうか。14型も、羽虎も前回の攻略には参加していたもんなぁ。


 扉を開け、螺旋階段を降りる。深く、暗く、怪しい雰囲気の螺旋階段を抜けると、かなり広い部屋に出た。球場三つ分とか、そんな感じだな。


 そして、その広い室内の半分を仕切るように透明な壁があった。透明な壁の向こう側にも、こちらと同じような階段が見える。


 その階段の前に14型が立っていた。作り物めいた笑顔で腕を組み立っている。こちらに気付いた14型がスカートの端を掴み優雅にお辞儀をする。そして、そのまま踊るように部屋の中央へと駆ける。


 その14型の足元が崩れ落ち、下から龍が現れる。14型は、崩れた足元を飛ぶように渡り、龍の背へと飛び乗る。


「ランちゃん、こっちも、こっちも」

 こちらでは天井が崩れ、そこから同じような龍が現れていた。


 龍の背に乗った14型が、龍の頭まで駆け上がり、殴りつける。しかし、その拳は、固い鱗に跳ね返されていた。14型が跳ね返された自分の手を見る。そして、何やら、その拳が光り輝き始めた。


「ランちゃん、こっちも急いだ方がいい感じやね!」

 あ、ああ。14型も成長しているからな、前回の時のように時間はかけないか。


 上からは崩れた無数の天井の欠片が落ちてくる。


『右です!』

 ユエインの言葉に反応して右へと飛ぶ。そして、俺は、そのまま黄金妃の力を借りて天井の破片を蹴り、空へと駆け上がる。


 14型が光る拳を龍の頭に叩きつけ、その固い鱗を弾き飛ばす。


 俺は龍の眼前へと飛び上がり、真紅妃を構える。


 14型が世界の壁槍を構える。


 俺が、このぐにゃっとした芋虫の体を無理矢理曲げ、黄金妃で龍の頭を蹴り飛ばす。


 14型が龍の頭を世界の壁槍で貫く。


 俺が、龍を蹴り、その反動で一回転、そのまま真紅妃で龍の頭を貫く。


 14型の世界の壁槍が龍の頭の中に隠されていた魔石を貫き砕く。


 真紅妃が龍の鱗を貫き、その中に隠されていた魔石を喰らう。


 魔石がなくなった龍の体が光となって霧散し消える。


 よし、勝ったッ!


 14型の足場になっていた龍が消え、落下を始める。14型は鉄壁のスカートを掴み、不動の姿のまま落下していく。おいおい、おい。


 その時だった。


 14型が何もない空間を蹴り、飛んでいた。落下して大変なことになるかと思ったら、これだ。ぼよーん、ぼよーんって感じだな。えーっと、アレだ。もう何でもありだなぁ。14型に関しては、あれこれ、真剣に考えるだけ無駄だ。気にしないようにしよう。

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