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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
12 むいむいたん
974/999

12-37 砂漠の迷宮を探して探して

―1―


「そんな感じやね」

 二夜子は再びくるりと回転して、また、元の小さな羽猫の姿に戻った。人型で行動するわけじゃないのか。

「あっちは疲れるからね。今回みたいな時だけやね」

 もしかして、あの羽猫の姿って、二夜子の分体の本当の姿なのか? あり得るな。ファー・マウって名前も、分体としての名前だったのかもしれない。来栖二夜子本人の分体のファー・マウって感じでさ。分体ごとに名前をつけていたってのはあり得る話だ。


『二夜子、よろしくですね』

 狐姿のユエインは嬉しそうだ。まぁ、秘密を隠していたって言っても、仲間だもんな。

『分かった。改めてよろしく頼む』

 小さな羽猫は俺の前で楽しそうに手を振っている。たく、まぁ、救えないと思っていた仲間の一人を救えた、と、それでいいか。

「マスターが許したので特別なのです。よろしくなのです」

 何故か、14型は俺の頭の上に両手を置いている。えーっと、あの、14型さん? それを見た二夜子が驚き、14型とにらみ合っていた。いや、あの、だからね、俺の頭の上は、お前の座席じゃないからね?


『次に向かうのは、砂漠にある八大迷宮『二つの塔』だ』

 俺の言葉に14型と争っていた二夜子と、それを呆れたように見ていたユエインが頷く。

『魔法が使えない塔とスキルが使えない塔の二つを同時に攻略する必要がある』

「マスター、片方はお任せください」

 14型が二夜子のほっぺたを引っ張っていた手を止め、優雅にお辞儀をする。まぁ、そうなるよな。今の14型なら任せても大丈夫だろう。逆に俺が向かう塔の方が不安なくらいだ。

『自分は魔法が使えない方の塔を担当する。14型はスキルが使えない方の塔を頼む』

「マスター、お任せを」

 ああ、任せた。

「うちらはランちゃんと同じかな?」

 浮かんで14型に猫パンチを繰り出していた二夜子が、こちらへと片目を閉じる。

「マスターをお任せするのです。不甲斐ない姿を見せないようにするのです」

 14型が二夜子の猫パンチをかわし、おでこをくっつけそうな勢いで、その二夜子に顔を近づける。

「14型ちゃんは、本当にランちゃんが好きやね」

「当然です。どんなにお間抜けで足りない行動をされていても、私のマスターなのです」

 あのー、14型さん。俺、そんなに足りてない? 結構、頑張っていると思うんだけどなぁ。


 ……。


 ま、まぁ、とりあえず八大迷宮『二つの塔』に向かうぞ。


『では、飛ぶぞ』

 俺の言葉に皆が頷く。


 俺は転移スキルを使い飛ぶ。始まりの地――この世界の始まりになった地から砂漠へと飛ぶ。


 そして、かつての遺跡の残骸が――その姿を残している砂漠へと降り立つ。かつての文明の残滓、か。俺たちが居た時代の、世界の、残りが遺跡として残っているなんてな。


「熱いねぇ」

『暑いですね』

 毛玉二人が泣き言を言っている。


 そして、そこには何もなかった。確かに、遺跡はあるけど、あるけどさ。肝心なものが見えないんだけど?


 あれぇ?


「何もないねぇ」

『何もないですね』

 いや、うん。砂漠が広がっているだけだねぇー。遺跡はあるけどさ。


 あれぇ?


 俺、間違いなく八大迷宮『二つの塔』をイメージして飛んだよな?


 なんで迷宮が無いんだ?


『すまない。座標がずれたのかもしれない。もう一度、飛ぶぞ』

 俺はもう一度、八大迷宮『二つの塔』をイメージして飛ぶ。空へと舞い上がり、そして、砂漠に降り立つ。


「何もないねぇ」

『何もないですね』

「何も観測できないのです」

 あ、はい。


 そこは砂漠が広がっているだけだった。


 あれぇ?


 そ、そう言えば、八大迷宮『二つの塔』って、入るのに妖精の鐘が必要だったような。うん、そうだよな。そのためにナリンへと向かってさ、そのオークションに参加したんだもんな。えーっと、今から妖精の鐘を入手する? 前回もさ、それで凄い苦労したのにさ、いやいや、無理だろ。


「ランちゃん、ここにあったはずなんよね?」

 二夜子の言葉に頷こうとして、首がないことを思い出し、『そうだ』と答えておく。

『移動式なのかもしれませんね』

「そうやねー」

 二夜子とユエインが頷きあっている。


「ランちゃん、その迷宮って、どんな形状? 塔なんよね?」

 俺は二夜子たちに二つの塔の形状を伝える。砂漠に埋まっている塔だよな?


「ユエイン、頼める?」

『二夜子、もちろんですね』

 二夜子の小さな羽猫の姿が光り輝く。そして、大きな、俺たちを乗せて運んでいた頃の姿へと戻る。

「ランちゃんたち、乗って」

 俺たちは巨大化した羽猫姿の二夜子の背中に乗り込む。

「あまり毛を引っ張らんといてね」

 二夜子は羽猫の姿でニシシと笑っている。あー、毛を強く掴まれると、そのサイズでも意外と痛いのか。


『しかし、空から探すとしても、この広大な砂漠をあてもなく探すのは難しいのでは?』

『任せてください』

 ユエインが狐耳を動かし微笑む。


「行くよー」

 二夜子が羽ばたく。砂塵をまき散らし、空へと浮かび上がる。

『二夜子、とりあえずまっすぐお願いします』

「らじゃー」

 二夜子が砂漠の空を進む。風のバリアがあるから、全力ではないのだろうが、それでも相変わらず早いな。


『大きなサイズの移動している物体を発見。二夜子、右へ』

「らじゃー」

 二夜子が右へと急旋回をする。


『二夜子、左です』

「らじゃー」

 今度は左へ。


『また左です』

「むぅ。結構、ちょこまかと動いているんやね」

 二夜子はさらに左へ。


 砂漠の上空をユエインの言葉のままに、ふらふらと飛び続ける。それは、俺には、当てもなくさまよっているようにしか感じられなかった。


『まっすぐです』

「らぁじゃぁー」

 そして、ついに見えてきた。


 砂漠に埋もれるようにぽっこりと塔の上部分が見えている。

『二夜子、アレです』

「らじゃー。逃がさへんよー」

 二夜子が砂漠の塔へと突っ込むように飛ぶ。


 うん。


 やっとか。


 見つかって良かったぜ。


 何というか、凄い力業だけどさ、見えてきたな。


 行くぜ、八大迷宮『二つの塔』!

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