12-33 八大迷宮『空中庭園』
―1―
空中庭園。
神聖王国レムリアースの首都ミストアバンの大地となっている、かつては空にあった迷宮。
風の属性をメインとした八大迷宮の一つ、空中庭園。
俺は14型、ユエインと共に八大迷宮『空中庭園』へと向かう。ネウシス号が降りた中庭を抜け、その奥、八大迷宮『空中庭園』の入り口がある、手入れのされた庭園へと向かう。途中、誰かと出会うことはなかった。これもウルスラの仕業だろうか?
そして、俺たちは、その庭園に――そのまま八大迷宮『空中庭園』へと入る。
八大迷宮『空中庭園』、その中には、こちらを遮るように作られた巨大な扉があった。あー、そう言えば『空中庭園』の中に入るのって鍵が必要なんだったな。やっべ、用意してないや。うーむ、学院の禁書庫の方から中に入るべきだったか? あっちなら、直に迷宮の中だったはずだもんな。ただ、あちらだと転送装置を使わないと駄目だからなぁ。今の状況では上手く転送装置が使えるって保証もないし、うん、俺のこの、判断で間違ってなかったはずだ。
で、どうしよう。迷宮の中に入ってから発券所でエンブレムを作る必要があるけどさ、それには中に入る必要があるわけで……。
八大迷宮『名も無き王の墳墓』でやったように無理矢理通り抜けるか?
むむむ。
「マスター、開けます」
俺が考えている横を14型がゆっくりと歩き抜け、巨大な扉に手をかける。
「アクセス」
14型の言葉と共に巨大な扉に光の線が走る。そして、大きな扉が開かれていく。
「マスター、行きましょう」
あ、はい。そう言えば、この迷宮、八大迷宮『空舞う聖院』と同じで機械系か。14型と相性の良い迷宮だよな。
「マスター、情報を検索します」
扉を抜け、八大迷宮『空中庭園』の中へと進む。そのまま駆け抜け、広場へと到着する。
「この星から逃げ出すために作られた恒星間移民船のうちの一つです。完成し飛び立ち、そのままあの女に利用されたようです」
広場に到着したところで大きな音が鳴り響いた。って、ちょっと待て。恒星間移民船?
『14型、その恒星間……』
「マスター、敵のようです」
先ほどの大きな音に反応したのか周囲から二匹の魔獣が現れる。それは長く牙が伸びた虎のような魔獣と鋭い爪を持った熊のような魔獣だった。以前も戦った相手だな。ただ、あのときは丸い球体が警報を鳴らしていたはずだが、今回、それは無いみたいだな。
俺は虎と熊を元にしたような魔獣を見る。今の俺なら楽勝だろう。
だが、あまり戦う気がしない。
14型が動く。
『待て』
しかし、俺はすぐに、それに待ったをかける。
再生しているってことは、この二匹も、この迷宮に囚われている実験体か。この迷宮自体が解放されれば、この二匹も解放されるだろう。
『14型、痛みを感じないように一瞬で終わらせてやってくれ』
俺の言葉に14型が優雅なお辞儀を返す。そして、そのまま駆ける。
虎が大口を開け、長く伸びた牙を煌めかせる。14型は、その横を抜け、手に持った世界の壁槍で虎の魔石を貫く。そして、すぐに引き抜き、反対方向から迫ってきていた熊の魔獣の魔石を貫き砕く。二匹の魔獣は一瞬にして崩れ落ちた。
動物と魔素を混ぜ合わせた魔獣だったのだろうか。魔素がある限り、また再生し、迷宮の魔獣として襲いかかってくるだろう。ここは、そういう世界だからな。囚われ、何度も蘇り、そして倒される。そんなのってさ、そんなのって、なぁ!
「マスター、行きましょう」
魔獣を倒した14型がこちらへと振り返る。ああ、行こう。
俺と14型、ユエインは歩き出す。
『14型、先ほどの話の続きだが、恒星間移民船について聞いても良いか?』
俺の言葉に14型が頷く。
「はい、マスター。この船は逃亡者たちによって作られたものです。この施設は、元々、この星を捨て、移住できる星を探すために作られた移民船の一つです」
移民船?
『逃亡者? 星を探す?』
俺の言葉に14型が頷く。
「あの女によって滅茶苦茶にされたこの世界に諦めをつけて、外へ逃げることを選択した者達のことです」
なるほど。しかし、その船がここにあるということは……、
『逃げることは出来なかったのか』
俺の言葉に14型は首を横に振る。
「マスター、彼らは、そもそもの考えが間違っていたようです」
んんん?
『そもそもの考えだと? どういうことだ?』
よくわからん。
『なるほど、なんとなく理解出来ましたね』
ユエインが頷いている。だから、どういうこと?
次回の本編更新は2017年12月9日の土曜日を予定しています。