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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
12 むいむいたん
963/999

12-26 八大迷宮『名も無き王の墳墓』

―1―


 墳墓。


 小さな祠の中に眠る誰のものとも分からない棺。その下に作られた10階層にも及ぶ巨大な迷宮。


 闇の属性をメインとした八大迷宮の一つ、名も無き王の墳墓。


 俺たちは、かつては冒険者で賑わい、今は、人の姿が見えない東の中庭を歩き、小さな祠の中へと入る。避難したという人の姿が見えないな。もしかして、迷宮の中か? それだとちょっと不味いな。


「マスター、情報を検索します」

 階段を降りる。さあ、ここからが迷宮のスタートだな。


「情報が見つかりません。何かの施設を流用していると思うのですが、情報は見つかりませんでした」

 14型も知らない――いや、アルファの知識にない施設、か。多分、葉月が一から作ったからじゃないだろうか。いかにもゲームのような、何処かのゲームを参考にしたかのような作りの迷宮。他の八大迷宮と比べても異質な作りだよな。


 ……。


 いや、異質か? どれもこれも、他の八大迷宮も異質だったような気がする。


 石壁に囲まれた階段を降りていくと広い通路に出た。壁には火の灯った燭台が並んでおり、通路はほんのりと明るい。右には扉、左は通路が続いている。そして、その扉の近くには無数の小さな石像が置かれており、その石像に囲まれるように幾人かの人々が座り込んでいた。鎧に盾、武器を持ち、疲れたように座り込んでいる。冒険者か。


「いつぞやの芋虫冒険者じゃないか」

 座り込んでいた冒険者の一人が声を上げる。うーん、知らない人だ。向こうは知っているけど、俺は知らないってパターンだな。まぁ、いきなり世界の敵(ワールドエネミー)だな、死ねぇって襲いかかられるよりはマシか。

「お前も、ここに逃げ込んできたのか?」

 違うぜ。となると、この座り込んでいる人たちは逃げ込んできた冒険者か?

『いや。ここには他にも逃げ込んできた人たちがいるのか?』

 俺の言葉に冒険者たちは首を横に振る。

「こんな時期に迷宮に逃げ込むのは俺たち冒険者くらいだ。戦えないような連中はヤズ様の計らいで城の二階だよ」

 そうか、それは良かった。って、戦えないような連中って言うけどさ、ここの人たちもあまり戦えるようには見えないけどなぁ。まだ、一階層だからいいけどさ、これが徘徊する強力な魔獣がいるような階だと、危なそうな……。


『しばらくすると、この迷宮は崩壊を始めるだろう。君たちも他の仲間を誘って城の二階へ避難するといい』

 一応、伝えておかないとね。

「なんだと!」

「女神さまに見放された以上、起こりえることだよ」

 冒険者連中が騒ぎだそうとしたが、一人の冒険者が、それを沈めていた。上手くまとめて逃げてくれるといいな。まぁ、この様子なら何とかなりそうかな?


 俺は、俺で急ぎ、この迷宮を攻略しないと駄目だからな。まだまだ残っている八大迷宮があるからな。




―2―


 迷宮を進む。右手の扉から、7階層に飛べれば、一気にショートカットが出来るんだが、ステータスプレートを持っていない今の俺では起動できるか分からないからな。6階層から7階層に上手く降りる道があればいいのだが。


 2階層に降りると、周囲はさらに暗くなった。まぁ、俺はスキルの力で暗闇でも見ることが出来るから問題ないんだけどね。

『暗くなったが、14型、ユエイン、大丈夫か?』

 一応、他の二人がね。今回は俺だけじゃないからな。

「マスター、小動物がどうかは分かりませんが、私は大丈夫です」

 まぁ、14型だもんな。しかし、ユエインを小動物扱いか。ま、まぁ、見た目は尻尾が九本あることを除けば、普通に狐だもんな。いや、毛並みは金色だし、気品に溢れた感じは、ただの狐とは言えないか。


『私も問題ありませんね。狐は夜行性らしいですから、その影響かもしれませんね』

 芋虫の――かつての俺よりハイスペックだな。俺は凄い苦労したのになぁ。ベースが違うと、こんなに違うのかよ……。

『ところで、ここは迷宮ですか?』

 迷宮です。

『葉月せらの作った、ゲームを参考にしているであろう、迷宮だ』

 俺の言葉にユエインが少しだけ首を傾げ、そして頷く。

『それなら、何とかなるかもしれませんね』

 そう言葉にするが早いか、ユエインが大きな鳴き声を上げた。ユエインの大きな鳴き声が迷宮にこだまするように広がっていく。何をしたんだ?


 何かを確かめるようにユエインの狐耳がピクピクと動く。そして、今度はユエインが小さく鳴いた。すると、ユエインの前に、少し揺れているホログラムのような映像が現れた。それは、この階層の立体的な地図だった。

『音の反響を確認しました。これは、音で作った、この階層の地図ですね』

 おいおい、そんなことが出来るのかよ。


「マスター、危険です」

 しかし、その音に反応したのか、何かを引き摺るような音と荒い呼吸音が近づいてきた。かなりの速度だ。この階層の徘徊する魔獣、ネザーブレイドかッ!


 天井を這い恐ろしい速度で迫ってきた袋を持った化け物が、その天井から大口を開けて飛びかかってくる。


「マスターの邪魔です」

 俺が気付いた時には、その大口に世界の壁槍を持った14型の右腕が突っ込まれていた。ネザーブレイドの後頭部を貫いて槍の先端が生まれている。ネザーブレイドは、その状態でも動き、14型の右腕を噛みちぎろうと、その口を閉じようとする。しかし、14型の右腕には傷一つついていない。歯が、牙が弾かれている。

「無駄です」

 そのまま14型が迷宮の地面にネザーブレイドを叩きつける。ネザーブレイドはぐちゃりと砕け、はじけ飛んだ。え、エグいなぁ。


「マスター、私の方が役に立つと思うのです」

 あ、はい。

『それなら露払いはお願いするわね。音を見る限り、こちらに隠し通路がありそうね』

 そう言って狐姿のユエインが優雅に歩き出す。


「遅いのです」

 そのユエインの首を背後から14型が掴み、持ち上げていた。

「さあ、マスターの為に案内するのです」

 えーっと、何だかなぁ。


『ねえ、何で私はこういう扱いなの?』

 ユエインがぶらぶらとした姿のまま、俺の方を見る。俺はユエインの言葉に答えることが出来なかった。


 ま、まぁ、隠し通路に進んでみましょうよ、ね?

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