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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
12 むいむいたん
958/999

12-21 八大迷宮『空舞う聖院』

―1―


 空舞う聖院。


 今は海底深くに眠る聖院。かつては、空に浮かび、空を飛び続けていた聖院。


 金の属性をメインとした八大迷宮の一つ、空舞う聖院。


 俺は軍船の甲板に出て、海底深くに沈んだ『空舞う聖院』を見る。ここには守護者がいなかったんだよな。フウキョウの里で星獣をやっていた来栖二夜子か、それとも新大陸に囚われていた雷月英か。どちらにせよ、葉月の楔から自力で抜け出せたんだよな。


 海は透き通り、その奥に沈んでいる『空舞う聖院』の姿がしっかりと見える。しかし、その巨体が沈んだことで海流が変わったのか、そこまでの道を塞ぐかのように大きな渦と渦がひしめき合っていた。確かに、これは普通の船で近寄るのは無理そうだ。ただまぁ、ある程度まで近寄った後、俺が《永続飛翔》スキルで飛んでもなんとかなったかもしれないな。

 俺たちの乗った軍船が渦に逆らい、乗り越え、進む。これは、かなり揺れるな。船酔いの酷いキョウのおっちゃんがいなくて良かったぜ。


 軍船が渦を抜け、沈んだ八大迷宮『空舞う聖院』の真上に止まる。

「ここから、どうされるおつもりです?」

 元将軍が俺に声をかけてくる。どうしよう?


 ……なんてな。


 こういうのはさ、俺らしく、力押しで行くしかないよなぁ。いつものことだ。そうだよな、この世界、出来ると思った者勝ちだ。

『激しい揺れと波飛沫が起こると思う。気をつけて欲しい。14型、槍を』

 俺は背後に控えていた14型から世界の壁槍を受け取る。サイドアーム・アマラに真紅妃を、サイドアーム・ナラカに世界の壁槍を持ち、構える。

『14型、俺の後に続け』

「了解です、マスター」


 俺は海へと飛び込む。


――《Wインフィニティスラスト》――


 真紅妃と世界の壁槍が無限の螺旋を描き、海へと突き刺さる。二つの螺旋が大きな飛沫を飛ばし、巨大な穴を穿つ。


 道は出来た。


 この一瞬で飛ぶ。


――《永続飛翔》――


 《永続飛翔》スキルを使い、海に沈んでいる『空舞う聖院』の天辺部分に作られた小さな神殿へと飛ぶ。


『14型!』

 俺の後を追うように螺旋によって作られた渦の空間を14型が飛ぶ。何もない空間を蹴りロケットのような勢いで飛ぶ。

 俺の《Wインフィニティスラスト》の勢いで海に穴が開いたのは一瞬――その隙間はすぐに閉じられようとしている。その一瞬の間に俺と14型は小さな神殿の入り口まで飛び、その扉をこじ開け、中へと滑り込む。

 14型が扉を閉じたすぐ後、その扉を叩くように、包むように、水が轟音を立てる。ホント、ギリギリというか、力業だな。


「マスター、情報を検索します」

 この神殿の入り口で蜥蜴人の戦士コウ・コウと戦ったんだよな。あいつは強敵だった。だが、借り物の力で強くなったつもりのヤツには負けられなかったからな。


 ……。


 いや、今の葉月が作ったシステムでスキルや魔法を使っている俺も、借り物の力を使っているという意味では同じか。


「瘴気を使った生物の進化実験を行っていた施設を元にしているようです。その実験はある意味失敗に終わり、その過程で魔素を使った新エネルギーの発見に繋がったようです。魔導船の浮遊エネルギーにも使われるそれらの開発施設ということで、軍事拠点に転用されたものを、そのまま、あの女に利用されたと推測されます」

 軍事拠点か。葉月に対抗する為に魔素を研究していたら、そのまま、それをあいつ本人に逆利用されたとか、救われないな。

「この施設では他施設で賄いきれない魔素エネルギーの補完も行っています」

 『世界の壁』の結界なんかもそうだな。いや、この14型の話しぶりだと、本来は『世界の壁』単体で賄うものなのか? 何らかのシステム障害で、それが出来なくなったから、ここからエネルギーを送っているって感じだったのか? まぁ、今更、考えても仕方ないな。

『14型、槍を返そう』

 俺は14型に世界の壁槍を渡す。


 薄暗く静かな聖院を進む。この八大迷宮は、出てきた敵が機械の防衛システムばかりだったからか、新しく出てこないな。静かなものだ。


 階段を降り、通路を進む。中に海水は残っていないな。排水機構がしっかりしているのか、それとも浸水しなかったのか、まぁ、どちらでもいいか。


 かつての実験施設だったと思われる場所を抜け、通路へ。さて、向かうのは動力室か制御室か。まぁ、無難に動力室か。


 14型とともに動力室へと入る。

「マスター、ここから、この施設にアクセスします。マスターなので仕方ないのですが、サブシステムからバイパスを通るこちらではなく、制御室に向かうことを推奨したかったのです」

 14型が空間にキーボードを浮かび上がらせ、操作する。えーっと、よく考えたら、以前みたいに制御室が占拠されているわけじゃないから、いきなり制御室で良かったのか。あー、えー、うん。


 って、アレ?


 今回はキーボードが見えるな。もしかして、前回、キーボードが見えなかったのは攻略済みの迷宮で、攻略者(いや、その子孫か)が居たからか?


 ……。


 となると、だ。

『いや、14型。ここからで間違いない』

 この迷宮は未攻略に戻っているって、ことだからな。


「マスター、制御室への道、開きます。現在、向こうへのアクセスが制限されています、ご注意を」

 14型が動力室の隅に転送用の円形の光を作り出す。

『14型、行ってくる。お前は、ここで、そのまま待機だ』

 14型が俺に綺麗なお辞儀を返し、手に持っていた槍を差し出す。

『その槍は、お前のモノだ。そのままお前が持っているといい』

 この動力室が安全とは限らないからな。


 さあて、行ってきますか。


 何が待っているやら……。

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