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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
12 むいむいたん
955/999

12-18 広がる海と受け取った思い

―1―


「マスター、迷宮が崩壊を始めたようです」

 俺が楔となっていたゆらとを解放したことで世界の壁の崩壊が始まったらしい。床が大きく揺れ、崩れ落ち、崩壊していく。この迷宮を形作っていた魔素が分解し、元の黒い液体へと還元されていく。

『14型、このまま飛ぶぞ』

 飛び立とうとした俺たちの足元に光る円陣が描かれる。ちっ、そう言えば、前回もこうなっていたな。


 そして、すぐに周囲の風景が変わる。


 転送先は何処かの閉じられた部屋のようだ。何処か? いや、ここは――俺は部屋を見回す。この部屋自体も揺れ、振動し、崩壊を始めている。急ぐ必要があるな。

「何処を見ているのです、マスター?」

 ああ、14型も一緒に転送されたか。この辺りも前回と同じだな。

「きゅううん」

 頭の上の九尾の子狐も一緒か。寝ていたのが転送のショックで起きたのかな。


 部屋の中央には何も置かれていない台座。そして、その奥には崩れた黒い直方体の残骸。前回と一緒か。ここにあったのは確か『てぶくろ』だったよな? さすがに残っていないか。いや、世界樹では叡智のモノクルが残っていたよな? この違いは何なんだ?


 ……。


 いや、結論を出すのは、まだ早いよな。もう少し情報を入手してからだ。


 それよりも早くここから出なければ……。

『14型、急いで脱出するぞ。このままでは迷宮の崩壊に巻き込まれる』

「了解です、マスター」

 前回、キョウのおっちゃんたちが開けた壁穴より脱出する。


 崩壊の始まった迷宮を駆け抜け、外周へ、外へと脱出する。


 世界の壁は崩壊し、消える。魔族を封じていた壁は消えるのだ。壁は消え、これからは、魔族も人も、全ての人々が手を取り合って生きていける世界になるはずだ。それだけの月日が、そうなっても構わないだけの月日が経ったはずなのだから。もう憎み合い、戦いあう、そんな女神の呪縛から解き放たれてもいいはずだ。

 俺が居る限り、もう二度と、争いは起こさせない。


 過去のしがらみは、俺が絶つ。


 決意を決めた俺の前に永久凍土の側から何かが飛んできた。それらは崩れ落ち始めた世界の壁の外壁に突き刺さる。


 赤く燃える大剣が、

 白く輝く死の鎌が、

 黒く煌めく戦斧が、

 青く流れる短剣が、


 突き刺さる。


 そして、俺が見ている前で、4つの武器が溶けはじめ、混じり合い、一本の矢へと姿を変えていく。


 俺は突き刺さった矢を引き抜き、永久凍土側を見る。まさか、な。いや、そうだよな。まさかじゃない――思いが形作ったこの世界なら必然だ。そうだな、そうだよな。この矢で一矢報いてやるよ。お前らだって、お前たちの世界を守る為に戦ったんだよな。方法は違えど、見えていたモノは同じだったはずだ。お前たちの力も、意思も、確かに、受け取った。


『飛ぶぞ、14型』

 14型の手を持ち、そのまま《転移》スキルで飛ぶ。




―2―


 キャラ港近くへと着地する。


 俺は、その場で14型に世界の壁槍を渡す。

「マスター、これは?」

『アルファと馴染みのあったゆらとの槍だ。お前とは相性が良いはずだ』

 14型が槍を受け取り、軽く振り回し、突きを放つ。槍の扱いも上手いじゃないか。

「マスター、よろしいのですか?」

 俺が使ってもいいんだけどさ、でもさ、俺には真紅妃があるし、それにさ、タブレットを使ってアルファとコンタクトしていたゆらとの事を思うと、これが正解な気がしてさ。だから、いいんだよ。

『まずは八大迷宮『空舞う聖院』へ入る為の足を探すぞ』

 ファットのネウシス号が使えれば一番なんだが、最後の戦いで駄目になっただろうし、そうなるとなぁ。

 ホーシアに渡って軍船を借りるか、それとも残っているファット団に頼んでみるか。


 まぁ、確実なのは軍船かな。ファット団の方だとさ、当時でもネウシス号しか船がなかったんだからさ、となるとファット団には船が残っていないだろうし、それに俺なら、この国の女王と顔見知りだもんな。国を救った英雄だもん。この状況でも何とかなるはずだよな? な?


 俺が港町に近づくと、驚き慌てた様子で筋肉を増量したような男がこちらへと走ってきた。

「マスター、芋虫と同程度の知能の輩が走ってきているようですが、迎撃しますか?」

 いや、しなくていいから。って、14型さん、さらっと俺をディスりましたか?

「お、おい! あんたよ、不味いってよ、あんた、世界の敵(ワールドエネミー)として標的にされているの知らないのかよ!」

 知ってます、知ってますよー。

『いや、ホーシアに向かいたいのだが、船は出ていないか?』

 筋肉のお兄さんが慌てて首を横に振る。

「今はそんな状況じゃないって、俺の話聞いてたよな?」

『船が出せないのか?』

「いやいや、だからよ。もし、あんたが世界の敵(ワールドエネミー)じゃなかったとしても、無理だよ」

 うーむ。船は無理か。

「マスター、権力を使って船を徴収することを提案するのです」

 するな。


 仕方ない。


 飛ぶか。


 たまには船旅も悪くないと思ったんだけどなぁ。


 タイミング良くうちの国の船が貿易の為に来ているとか、ないよなぁ。ないよな?

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